図2はレジリエンス・スコアを業種別に集計して比較したもので、金融業がトップとなっている。これは2008年の金融危機以降、当局による規制が厳しくなった結果であろうと考えられている。しかしながら金融業の各社が、規制当局から罰金を課せられることを防ぐために積極的に取り組んでいるにもかかわらず、金融業にとって最大の脅威は「サイバー攻撃によって資産が盗まれたり損なわれたりすること」であり、しかも今後増加することが懸念されているという。

図2.業種別レジリエンス・スコア(出所)FTI Consulting / Resilience Barometer 2019

金融業に次いでスコアが高いのが飲食料品(Food & Beverage)と消費財(Consumer Goods)の業界である。近年のICTの発達によってB to C企業の経営環境が急速に変化し(注2)、これによってビジネスモデルの変革を迫られ、主体的にリスクマネジメントに取り組んだために、他のB to B企業よりも様々な備えが進んだのではないか、というのが本報告書における見立てである。

本報告書では以上のような調査結果概要に続いて、テクノロジー、事業変革、ステークホルダーとの関係、規制、ESG(環境・社会・ガバナンス)、投資といった観点からの分析と考察が記載されており、幅広い視野から企業のレジリエンスを考える上で示唆に富む報告書となっている。

■ 報告書本文の入手先(PDF24ページ/約1.8MB)
https://ftiresiliencebarometer.com/

注1)G20にはEUが含まれているので、実際の調査対象国はアメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、日本、イタリア、カナダ、ロシア、中国、インド、ブラジル、メキシコ、南アフリカ、オーストラリア、韓国、インドネシア、サウジアラビア、トルコ、アルゼンチンの19カ国である。

注2)本報告書では「change and impact of digital convergence」と表現されている。なおdigital convergenceとは1995 年に米マサチューセッツ工科大学のNicholas Negroponte教授によって提唱された考え方で、「デジタル技術や通信技術の発達によって、放送・通信・出版など異なるメディアが一つに収斂(convergence)される」というものである。

(了)