現在の「風評被害」という言葉の中には様々なものが含まれます。いわゆる不祥事を「風評リスク」と呼ぶものや、「炎上」「集合行動」「デモ」に類するもの。また「うわさ」「流言」というものも「風評被害」の一種として捉えられることがあります。まずは、これらを区別して説明したいと思います。


①不祥事と「風評リスク」
風評被害という言葉が企業との関係で取り上げられたのは、2000 年に起きた雪印乳業の食中毒事件です。食中毒の原因は黄色ブドウ球菌ですが、当時の幹部が「私も寝てないんだ」と発言し、その映像がメディアで流され続けたこともあり業績が悪化し、事件の3年後に会社の形を変えました。これは人の命がかかわる安全の問題であり、謝罪や責任を求められる事態になった事例です。

別のパターンもあります。人の命には関わらない食品偽装が発覚して会社が倒産するケースです。謝罪会見の重要性を知らしめたのが大阪の高級料亭・船場吉兆です。偽装は倒産にストレートに結びつくわけではなく、その後の謝罪会見や対応のまずさで業績が悪化しました。これらはコミュニケーションの問題です。

倒産する企業がある一方、これを逆手に取った例もあります。個人情報を流出させたジャパネットたかたは、商品の販売を自粛して直後は毎日、一週間ごとに謝罪と広告を繰り返しました。この対応がすごく評価され、逆にイメージアップに結びつきました。今でも不祥事を起こした事業者にとって模範的な対応として有名な事例です。

不二家や「白い恋人」で有名な石屋製菓は偽装表示が明らかになり、赤福は売れ残った商品の製造日を変えた再出荷が問題になりました。これらは賞味期限や基礎表示の問題で、それ自体は問題ではあるのですが、結果的に直接人の命に関わるようなものではなかったこともあり、自粛して、むしろ再開するときに話題になり売り上げが倍増しました。

本当に人の命や事故に関わる問題なら企業の存続そのものの問題となりますが、コミュニケーション上の問題の場合は時間が経てば回復するパターンも多いのです。