2016/12/05
誌面情報 vol58
column 02
リオデジャネイロに3年間住んでいるという日本人女性の今田千草さんは、リオの魅力について「人と自然が近い街」と表現する。
「こんなに日常生活とビーチが近い場所は見たことがありません」(今田さん)。
真っ白い砂浜に、コバルトブルーの大西洋。夕暮れ風景に時間が経つのを忘れることも少なくないそうだ。
リオの市民は、東京で生まれ育った人を“江戸っ子”というように、カリオカと呼ばれる。「カリオカは優しくてコミュニケーション好き。生活が厳しくても、将来のことを心配せずに、その日をいかに楽しく生きるかを大切にしているんですね」。
10年近く前、京都大学大学院に通っている時に、南米に興味を持ち、ウルグアイのユネスコに半年間インターンシップで暮らした。帰国後も南米をさらに深く知りたいと思い、大学院卒業後、青年海外協力隊に入り、2年間ボリビアのタリハという街で村落開発普及員として働いた。その後も南米への魅力は深まり、舞い戻るかのように2カ月間ブラジルを旅行。その時に訪れたリオの風景がずっと忘れられなくなった。
一度はメキシコで働いたが、ブラジル旅行中に出会ったコロンビア人の夫と結婚し、リオで生活することを決めた。実際に住んでみると治安は思った以上に悪い。「南米のいろんな国に住んでいますけど、リオに来てから、拳銃と爆竹の音の違いがわかるようになりました」(笑)。財政状況も悪化の一途をたどる。それでも、皆が前向きでその日その日を楽しみ、高齢者やホームレスにも優しい。
「日本も貧国が深刻な問題になってきているし、若者も希望が持てなくなっています。何かヒントになることがあるんじゃないかと思っています」
リオ五輪開催中は、次期大会の開催地である日本・東京の魅力を発信するジャパンハウスで働いた。各国から来場する人々の日本への関心は強く「日本こそ、もっと日本の価値を発信していかなくてはいけない」と感じたと振り返る。
「日本は世界でも一番優しい民族。伝統も文化もあります。今その魅力を発信する余裕がなくなってきてしまっているんじゃないでしょうか。でも、世界中の人が、日本人がどうやって自然と社会を調和させながら生きているかを知りたがっているし、そのことは日本人が取り戻したいことでもあるんじゃないでしょうか」。
夫と2才の娘と3人で暮らす。来年には2人目の子供が誕生する。日本にはなかなか帰れないが、2020年に向け、日本がどのようなメッセージを世界に発していくのかを楽しみにしていると今田さんは話している。
(了)
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