この条文が改正される日も近い

毎年3月11日が近づいてきて震災の報道が増えてくると、心苦しくて、記事やブログを全く書けなくなるのが常でした。

今年は、それでも書いておきたいことがあります。現在、刑法の性犯罪についての条文が100年ぶりに変わろうとしています。男性も被害者に含まれ、告訴がなくても立件され、性犯罪とされる行為の対象が広がります。法定刑も変わります。

しかし、100年の間に染み付いた加害者に甘く被害者を責める風潮は、日常の意識が最も顕在化すると言われる災害時、被害者を苦しめています。次の災害が起きた時、決して、間違ってほしくないのです。これを機に「災害と性暴力」、この話題を一緒に考えていただければと思います。

書き出す前に一言、お断りを入れさせてください。性暴力にあった方へ。この文章中では、できるだけフラッシュバックが起こらないように生々しい表現は避けるようにしました。それでも、万全ではありません。無理してお読みにならなくて大丈夫です。なぜなら、これはあなたは悪くないということを、あなたのまわりの方にわかっていただくための文章です。この話題は特に、自分の微力さにメゲそうになるのですが、それでも、伝えてみようと思います。

さて本題です。この話題には、歴史があります。もし次の災害が起こったら、この歴史を踏まえてエビデンスのある議論をしていただきたいのです。

まず、阪神・淡路大震災の時。私も聞いたことがありますが、性暴力の噂はありました。しかし、統計上は出ていません。そのため災害時の性暴力は、すべてデマであり捏造であるという説が一世を風靡した時期がありました。防災に以前から関わっている方の中には、この「すべてデマ」説で更新が途絶えている方もいるかもしれません。

現在、「すべてデマ」説は否定されています。なぜなら、東日本大震災でエビデンスあるデータがとられたからです。データについてご覧になりたい方は、以下の報告書をお読みください。具体的に発生した事例も書かれています。被害者を特定されないよう配慮されている報告集です。

■東日本大震災女性支援ネットワーク 調査チーム報告集Ⅱ
http://oxfam.jp/gbvreport.pdf

なぜ、統計上にでてこないかについての分析も進みました。詳しく知りたい方はNPO法人「しあわせなみだ」の中野宏美さんの論文をお読みください。

■災害時の性暴力とは~見えないリスクを可視化する~
https://goo.gl/CHq10Q

論文中では複数の事例と数値をあげて、平時から被害者が警察に届けていない状況や、災害時に本人が声をあげることがいかに困難であったかが解説されています。

ただ、災害時に性暴力が増えるかどうかと言えば、そこはまだ厳密には証明されていません。そのため現在の災害と性暴力の知見は、

「災害時、性暴力はある。けれども増えるかどうかは厳密にはわからない」

というのがイマココの議論です。

今後、「災害時、性暴力は必ず増えます!」とか「災害時、性暴力があるなんてデマ!」という情報が、データの提示なしに断定で流れてきたら、エビデンスベースではない議論になってしまいます。扇情的な情報は、拡散されやすいですが、一歩ふみとどまって、情報発信していきたいですね。

さて、しばらくなかったことにされていた災害時の性暴力が、東日本大震災後にクローズアップされるようになりました。そのため熊本地震が起こった時には、いままで以上に的確に、迅速に対応できるにちがいないと私は楽観的に思っていました。

ところが・・・・実際に迅速でエビデンスベースの対応もあった一方で、ほんとにほんとに、なんだこりゃ?っていう情報も(←全然エビデンスベースじゃない主観的な意見ですみません!)たくさんまわってきました。みなさんの所にもまわってきませんでしたか?

熊本地震後のエビデンスベースの迅速な対応について知りたい方はこちらをご覧ください。

■熊本市男女共同参画センターはあもにい
http://www.harmony-mimoza.org


微妙で判断が難しい情報から、残念ながら拡散してはいけない情報もありました。次の災害時、同じ失敗を繰り返さないように、実際にまわっていた3つのケースを検証します。