震災経験者ほど準備万全

非常食の備えを増やし、車のガソリンはなるべく満タンにしておいて、いざという時には自分で判断して行動する―。東日本大震災を経て、災害に対する意識が高まっていることが、ウェザーニュースが一般市民を対象に実施したアンケート調査で改めてわかった。 

同調査によると災害への備えのために非常食(水だけという人も含め)を用意している人は全体の8割となり、震災前の2010年調査よりも約2割増加、その備蓄量も平均3.2日分と増加した。 

一方で、半数近い人が家や家具の震災対策を実施していない実態も浮き彫りとなった。調査は東日本大震災から1年半が経過した今年8月から9月にかけて(8/18∼9/5)スマートフォンのアプリ「ウェザーニュースタッチ」や携帯電話のサイトを通じて実施したもので1万9628人(男性47%、女性53%)の有効回答を得ている。ウェザーニュースは2010年にも同様の調査を実施しており、今回の結果との比較によって東日本大震災経験後の人々の意識の変化を見ることができる。

■非常食を用意しているか
「非常食を準備しているか」との質問の回答は「水+食料」が52%と半数を超えた。「水のみ」(16%)と「食料のみ」(10%)も合わせると全体の78%が何らかの非常食を用意している一方で「用意していない」という人も2割いた(グラフ1)。しかし2010年調査との比較では非常食の準備ができている割合は約20%増加。震災を経験し災害に対する意識は確実に高まったようだ。 

非常食を準備している割合を災害経験別にみると「被災して被害が長期に出た」など、長引く被害を経験した人ほど、準備を万全にしている傾向にあることが分かった(グラフ2)。 

その備蓄量については「約3日分」準備している人が42%と最多で、全体平均では約3.2日分だった。2010年比では「約1日分」「約3日分」と回答した人がそれぞれ約8%増加、準備していない人の割合は17%減少した(グラフ3)。震災経験別に回答を見ると、やはり、被害が長期に出た人ほど非常食を長期間分、準備している割合は多い。



■備えを生かせるか
調査では、避難時に備えた意識についても質問。非常食を備える人が増えている一方で、それを生かす行動が伴っていない様子もうかがえた。具体的には「非常食を持ち出せるようにまとめているか」との質問に「まとめていない」という回答が半数を超えている。わずかだが「どこにあるのかわからない」という人もいて、災害発生時に迅速に行動できるかどうか不安が残る結果となった(グラフ4)。 

フリーコメントに多く寄せられたのが「自家用車のガソリンを残しておく」「ガソリンをなるべく満タンにしておく」など、“ガソリン”に関するものだった。震災後に物流網がマヒし、ガソリンの供給が滞って困った経験から、最低限のガソリンを備えておくという意識が高まったとみられる。

■「指示を待つ」人よりも「自分の判断で行動」が増えた
「避難する時の判断基準は何か」という質問では、2010年調査では「自治体からの避難指示や避難勧告」を待つ人(39%)が最も多かったが、今回の調査では「自分で状況を判断する」人の割合が40%と最多になり、自治体からの情報を待つ人の割合は10%減少した。情報を待つのではなく、自ら積極的に行動しようという人が増えたわけだが、こうした意識を正確な情報に基づく冷静な行動に結びつけることが重要だ。

■「震災対策していない」が46%耐震改修・転倒防止が急務 
死者行方不明者が6000人を超えた阪神・淡路大震災では、負傷者も4万3000人を数えた。これらの中には家具の転倒や散乱で逃げ遅れたりケガをした人も多く含まれている。東日本大震災でも都内で家具類の転倒や、物の落下などによる被害が発生した。こうした状況にも関わらず、調査の結果では「家や家具などで震災対策を実施しているか」との質問に「している」という回答は54%で、していない」が「46%にもなった。実施している対策(複数回答)は「家具の固定」「高いところに物を置かない」「家の中に十分な安全スペースを確保」が多かったが、いずれも回答者の半数には及ばず十分とはいえない状況にある。また「ブロック塀の補強」「耐震補強」といった、家そのものの対策が少ない。対策のためには費用がかかり負担が大きいが、公的な補助を利用するなどして、家の対策をする人が増えることが望まれる。