平時と緊急時のリーダーの役割
BCMSユーザーグループが緊急提言

事業継続マネジメントシステム(BCMS)を導入する企業やコンサルティング会社らでつくるBCMSユーザーグループ※1では、昨年から「緊リーダーシップの重要性について、提言をまとめている。東日本大震災における教訓や、急時におけるリーダーシップ勉強会」※2を立ち上げ、平常時と緊急時それぞれに求められるリーダーシップについて研究を進めており、今年中頃までには提言書として発表する予定だ。

同勉強会のメンバーである三井住友海上火災保険コンプライアンス部企画情報管理室課長の篠原雅道氏・(BCI日本支部代表)およびインターリスク総研・コンサルティング第二部の笹平康太郎氏によると、これまでも、企業や行政機関、教育機関など、様々な組織でリーダーシップの必要性は指摘されていたが、具体的にリーダーシップの開発に資金や資源を投入することはほとんどされてこなかった。一方、欧米では、多くの組織が、リーダーシップの開発に巨額を投じ、リーダーの適切な戦略のもとで動けるよう、組織力の向上に向けた活動が既に活発化しているという。 

提言の構成は、①危機を乗り越えるために必要な組織、②迫りくる大規模災害、③企業のBCP実効性向上の必※3要性、④国際標準(ISO22301)にみる平時のリーダーシップ、⑤緊急時のリーダーシップ、⑥緊急時対応のためのリーダーシップ養成プログラム、⑦BCMSユーザーグループからの提言の7章立てになる見通し。 

このうち、①危機を乗り越えるために必要な組織では、東日本大震災において何が問題になったのかを改めて検証するとともに、緊急時においてなぜリーダーシップが必要なのかを分かりやすく示す。②迫りくる大規模災害では、首都直下地震で起こりうる被害を、東京都が発表した新たな被害想定を参考に整理し直す。③企業のBCP実効性向上の必要性では、日本の上場企業を中心に、BCPへの取り組み状況を分析。さらに、東日本大震災を振り返り、緊急時にリーダーに求められる資質特・性とは何かについてもまとめる。 

その上で、④国際標準(ISO22301)にみる平時のリーダーシップについて、事業継続マネジメントシステム(BCMS)の国際規格であるISO22301をベースに、その役割や資質、求められるスキルなどを検討する。 さらに、⑤緊急時のリーダーシップは、BCMSの責任者や要員が危機発生時に求められる役割と、それを達成するために求められる資質やスキルについて具体的に検討し、⑥緊急時対応のためのリーダーシップ養成プログラム、および⑦BCMSユーザーグループからの提言では、どのようにリーダーシップを開発していけばいいのかを言及する。 

提言の対象とするリーダーは、組織のあらゆる層の従業員だ。篠原氏はその理由について「特に危機発生時には基本的には誰もがリーダーになり得るというスタンス」と説明する。 

注目は、④と⑤の平時と緊急時のリーダーシップの役割。ISO22301の中では、平時の事業継続マネジメントにおけるリーダーの役割が書かれているだけで、緊急時の役割については書かれていない。篠原氏は、「BCMSにおける緊急時のリーダーシップの役割は、おそらく今後、世界的にも注目されてくる課題になる」と語る。