首都直下地震を想定、155の銀行が参加

一般社団法人全国銀行協会(以下、全銀協)昨年12月に業界横断型の訓練「ストリートワイド訓練」を実施した。金融業界では、平成22年度に全銀協主催により実施した新型インフルエンザ(強毒性)の発生を想定した業界横断訓練に続く2回目の取り組み。首都直下地震の発生を想定した今回の訓練では、銀行界として業務継続にあたり相応の態勢が整備されていることが確認できた。

3.11の課題を業界全体で検証 
全銀協は、銀行業務・事務の円滑化や、経済社会全体のインフラである決済システムなどの企画、運営などを担っているが、ここ数年、銀行界全体の業務継続体制の整備・向上に資するためのBCPに関する取り組みも行っている。 

「ストリートワイド訓練」とは、業界内で設定した共通の被災シナリオの下、複数の組織を巻き込んだ大規模な被災時対応シミュレーションを行い、その結果から解決すべき問題点を洗い出す、業界レベルの業務体制の整備を検証する訓練。 

日本では、平成22年度に全銀協主催により、国内のほぼすべての銀行が参加して、新型インフルエンザ(強毒性)発生を想定した業界横断訓練を実施しているほか、今年3月には東日本大震災を想定したストリートワイド訓練が、日本銀行盛岡事務所と東北の地方銀行との協力により実施されている。



全銀協は、東日本大震災を契機に平成23年度に銀行界全体として取り組むことが考えられる震災対応の一つの目安として、「震災対応にかかる業務継続計画(BCP)に関するガイドライン」を策定しているが、全銀協企画部次長の中里和義氏は、「東日本大震災において、計画停電や被災地における燃料不足などの課題が顕在化したことを踏まえ、個別銀行の単独の訓練では検証困難な金融機能が高度に集積する首都被災時の金融機能の継続性を訓練で検証することとした」として、2回目の訓練を行った。

現金払い戻し業務と資金決済業務の継続 
訓練の目的は、3つ。1点目は、各銀行における自行BCPの実効性の検証と課題の抽出、2点目は、1点目の対応を通じた銀行界全体の業務継続態勢の向上、3点目は、個別銀行の単独の訓練では検証困難な金融システム・社会機能維持の観点からの検証だ。 

この目的を踏まえた具体的な検証項目は3つある。1点目は、対策本部の立ち上げといった初動対応。2点目は、銀行の重要業務の一つである現金の払い戻し業務、振り込みや手形の決済といった資金決済業務に係る業務継続対応。そして、東日本大震災において問題が顕在化した帰宅困難者対応の3点。

震度のエリア別に分けた訓練シナリオ 
訓練の方法は、机上訓練方式を採用し、国内のほぼすべての銀行にあたる155の銀行および金融庁と日本銀行が参加した。 

政府が公表している首都直下地震の被災想定をベースに、東日本大震災後に各自治体が見直した最新の被災想定を反映した訓練シナリオを作成した。 

訓練シナリオの具体的な内容は、午前10時に東京湾北部を震源とするマグニチュード7.3の地震が発生したと想定。最大震度は7で、広範囲の地域が震度6強。電力・通信などのライフライン・インフラが途絶、機能低下するなどの被害が発生するとともに、これにより警備、運送などの外部委託先との連絡も不能困難な状況となる。また、被災日から3日目においても、一部の地域で停電が継続している状況とした。訓練参加銀行の本支店の所在地に応じたリアルな被害状況を作り上げるために、震度に応じた4つのエリアを設定し、それぞれのエリアごとに電力、通信、道路などのライフライン・インフラの被害などを個別に設定した。 

この訓練シナリオは、事前に電子メールにより訓練に参加する銀行に情報を開示しているが、訓練当日に全銀協から、業務継続に関する質問を記載した訓練シートを全参加銀行に一斉送信し、訓練シナリオ下で、各銀行が自行のBCPに即してどのような対応をとるか、それぞれシミュレーションを行い、自行のBCPの実効性を確認している。また、訓練結果(質問に対する回答)を全銀協に電子メールで返信し、これを集計して分析した結果を参加銀行に還元することで、参加銀行全体における自行の立ち位置が把握できるようにしている。さらに、金融庁と日本銀行に対しては、訓練日当日に自行の被害状況を報告する実働訓練を実施した。