約9倍になった西之島。(赤い太線は1991年の旧海岸線。提供:国土地理院)

西之島の面積が噴火で9倍に

国土地理院は、筑波研究学園都市(茨城県つくば市)の中核をなす調査・研究機関の一つである一方で、年間を通じて多彩な企画展などを開催している。見学者が絶えないのである。同院を訪ねると必ずといっていいほど新たな発見や驚きがある。

それは、地図ほど我々の想像力をかき立てるものはないからで、理系・文系の分野を問わず知的な刺激に満ちているのである。本年(2017年)4月以降今月までで、印象に残った研究成果、発表、企画展などを紹介しよう。

国土地理院は、噴火活動が続く小笠原諸島の西之島(東京都小笠原村西之島)の新しい2万5000分の1地形図を発行した。噴火後はじめての地図を一般に公表した。四半世紀ぶりの地図の更新である。

同島は東京の南約1000km、父島の西約130kmに位置する。火山列島(硫黄列島)と同一火山脈に属し、付近は海底火山活動が活発であることで知られる。新しい地図では、噴火によって9.4倍にもなった西之島の地形がはっきりと分かる。同院が、2016年12月撮影の航空写真に基づいて判断したものである。西之島は、2013 年11 月の噴火活動以降島の拡大を続けてきたが、2016年には火山活動が沈静化した。

国土地理院では、同年12月20日時点における西之島の海岸線及び地形を表記した2万5000分の1地形図を6月30日に刊行した。地形図の更新に利用した空中写真も同日に刊行した。加えて、同様に更新した、電子地形図や数値地図(国土基本情報)も同日にオンライン提供した。

詳細な地形が分かる火山基本図データ「西之島」について、国土地理院のホームページから公開している。公開データは、「西之島火山基本図データ(基図)」、「西之島火山基本図データ(陰影段彩図)」、「西之島火山基本図デー
タ(写真地図)」の3種類だ。

西之島の位置(提供:国土地理院)

<基礎データ>2016年12月20日時点の西之島の面積 : 2.72km2
※東京ドーム約58個分
※旧島(0.29km2)の9.4倍
最高標高143m
火山基本図データ「西之島」は、防災計画や火山の調査、各種研究などでの活用が期待される。

詳細な等高線(2m間隔)で表した図陰影段彩図
火山地形を立体的に見ることができるように陰影段彩図に基図を重ねて表示した図