見落としがちなリスク 
福渡氏は「国内の課題として、多言語化への対応やバリアフリー化などもある」と注意を促す。多言語化やバリアフリーは、巨大災害や大規模事故などに比べると、リスクという言葉が適切とは思えないかもしれないが、これらも、東京大会が掲げている「全員が自己ベスト」「多様性と調和」「未来への継承」という目的達成を阻害する要因になることからリスクとして捉えるべきだという。落合氏は、「民間企業においても、東京2020大会の目的達成に向けた種々の取り組みから自分たちの事業がどのような影響を受けるのか、もしくは、どのような影響を与えるのかを考える際には、マイナス面だけでなくプラス面につながる観点から気付けるリスクもあることを認識するべき」と付け加える。 

組織委員会の基本計画では、大会を支える機能(ファンクショナルエリア:FA)として、宿泊、出入国、競技、会場マネジメント、選手村マネジメンなど計52の機能を挙げている。 

福渡氏は「これら一つひとつの機能が抱えるリスクについて、対処の優先順位が必ずある。各機能の主体となる組織がリスクマネジメント体制を構築し、リスクを特定・把握・評価し、重要リスクを選定・対策した後、それをモニタリング・改善するPDCAサイクルを構築しなくてはいけない」と話している。

 

(了)