じゃあ、重曹をそのまま髪の毛にふりかけたらどうなるの?

人は汗をかきますよね。冬でも。寝ている時でも。そうすると重曹は溶け、アルカリ性になります。アルカリが髪につくと、たんぱく質が溶けます。そう、汚れだけじゃなく、皮膚も溶けるんです!

重曹が手についたらぬるっとして、軽く皮膚が溶けて、さらにアルカリが多いと手が荒れるほど溶けます。そんな重曹を、水で流しきれない災害時に、髪に使うって、ありえない!重曹をふりかけるという発想がまず間違っている。髪にかけると、アルカリによる肌荒れの原因になるので、全くおすすめできません。二重の意味で間違っている情報です。

重曹は食品にも使えるからいかにもナチュラルにみえます。だけど、そんなイメージだけの発想だと、こんな情報が流れてしまうのだと思うのです。

そもそも「自然素材=安全」ということはありません。野外で出会う自然の花は猛毒のものもたくさんあります。「合成だからダメ」「自然だから、なんでもいい」という発想なのではなく、私は「化学は、普段から生活の中に取り込まれている。化学の知識は、普段も災害時も生かすことができる」と考えています。

災害時のトイレはみかんの皮でお掃除できます!

例えばナチュラルクリーニングでは、アルカリの汚れである水あかやトイレのアンモニア汚れには、「クエン酸」を使います。今のトイレは、尿の飛び散りが少なくなる工夫が凝らされているので、昔の公衆トイレであったような強いアンモニア臭ってほとんどしないですよね。だから「普段のトイレ掃除に酸は必要なくなってきている」と本橋さんは話します。

でも災害時、関係者の努力でトイレは少しずつよくなってはきているものの、まだまだ尿などが飛び散りやすい和式トイレなどが仮設トイレとして設置されてしまうことも多いですよね。尿が飛び散ってアンモニアになってしまうと、普段のトイレ掃除用の中性洗剤では対応できなくなってしまいます。

そんな時、化学にもとづいたナチュラルクリーニングの知恵があると「酸がどこかにあれば衛生状態を保てる!」という発想に至ることができます。

クエン酸といえば、梅干しやオレンジ、レモンにも入っています。それにクエン酸だけが食物に含まれる酸ではありません。臭うけど、お酢も酸です。「洗剤がない、でも避難所トイレがアンモニア臭い。でも、みかんの産地だからみかんの皮がいっぱいある」なんて時は、みかんの皮で掃除ってこともできるのです。
(編集部注:みかんの皮には、クエン酸やビタミン類、精油成分(リモネン)などさまざまな成分が含まれています)

私がアウトドア流防災講座でお伝えしているのは、小手先の防災マニュアルではなく「その奥にある仕組みを知っている」こと。

ランタンを作りたければ、光を広げればいい。光の性質は直進と屈折と反射。LEDは直進しやすいので、水の入ったペットボトルの裏から照らすと屈折により広がるという話などです。

そうすると「生活にも役立ち、普段から使え、災害時にも応用できる」のです。アウトドア流防災も化学をちゃんと使ったナチュラルクリーニングも全く一緒ですよね!

「トイレはトイレ洗剤」「お風呂はお風呂洗剤」という思考停止の覚え方ではなく、小学校6年生でも習う酸とアルカリの性質を見極め、利用するナチュラルクリーニング。だから、災害時に応用がきくと思っています。

「とはいえ、化学なんて」という方にも朗報です。本橋さんも力説されていますが、「ナチュラルクニーニングは楽」なんです。

私はいくら自然に優しくても、毎日、気合と根性だけでは「ただでさえ子どもに振り回されていて掃除どころではないのに、やってられない!」と痛感しています。でも、 手抜きしてもきれいになって、しかも環境に優しければどれだけ楽か。この続きは是非、本橋さんの講座でお聞きいただければ。全国各地で講演されていますし、本もコンビニや書店で大人気発売中です♪

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