延べ170 人を支援で派遣

代替生産による調達もできない中、トヨタ自動車では伝家の宝刀ともいえる災害対応の速さにより、迅速な復旧を試みた。災害直後から現地に支援部隊を送り、4月26日時点で約60 人のメンバーが被災地支援を第一に現地での復旧活動にあたった。4 月26日までの延べ人数は約170 人に上る。2007年中越沖地震では、トヨタ自動車だけで約400人の支援スタッフを現地に送り、被災したリケンだけでなく周辺工場も含め復旧支援にあたったが、今回もそれに近い形をとった。

「3.11以降、災害が発生したときにいかに初動を早くするか、そして早期復旧に向けた活動にいかに着手するか、この2点が重要だということを弊社だけでなく仕入先やサプライヤーとも共有させていただいてきました。今回も何が問題になっているか、何の部品が問題になっているか、それに対してどう対策を講じるかということに対しては一定程度の対応はできたと考えています」(広報担当者)。

ジャストインタイムを守りながら

同社は組立工程に合わせて必要な部品を必要なときに供給する「ジャストインタイム(JIT)生産方式」を企業理念とする。

JIT生産方式は、効率的で無駄がない半面、ほとんど在庫を持たないため、たった1つの部品供給が滞っただけでもライン全体が止まる可能性があることが、これまでも繰り返し指摘されてきた。

この点について同社広報では「そもそもトヨタ生産方式は、効率性だけを追求するものではなく、異常があったら直ちにラインを止めて不良品を流さないことを徹底する考え方によるものです」と説明。部品を在庫保管しておいても、それが震災の被害を受けないとは言い切れない。異常事態の中、在庫部品を使ってでも無理に工場を稼働させれば不良品を発生させることにつながる。今回の熊本地震も「何が問題になっているかをまず特定した上で、対策を講じていく方針のもと、ラインを止めました」と説明する。

リスク品目を減らす

熊本地震により同社の生産には4月末時点までに約8万台の影響が出た。東日本大震災では2011年8月時点までに約76万台の影響が出たことに比べれば大きな数ではないが、同社広報では「影響台数も一時的には非常に増えてしまって、納車をお待ちいただいているお客様にはご迷惑をおかけしていますが、品質を確保する上で必要な対策であり方針でもあるので、理解してほしい」とする。

今後に向けた改善としては「リスクが顕在化したときに備え、リスク品目を減らしていくよう引き続き取り組んでいきますが、トヨタ生産方式の方針や考え方を変えることはありません」(広報担当者)とする。