生体認証がセキュリティ性と利便性を高めるかは使い方次第(イメージ:写真AC)

生体認証技術の活用分野

前回、生体認証が必ずしもセキュリティ性を向上させるわけではなく、むしろセキュリティ低下を招く場合もあることを述べた。では、生体認証は何のために開発され、どのように利活用するべきなのだろうか。

最初に断っておくが、生体認証技術は極めて重要な技術であり、使い方を誤らなければセキュリティ性を向上させ、安全を目指せるものである。重要なのは、生体認証とは本人識別技術であり、認証手段としての利活用は限定的であるという認識に立つことだろう。

生体認証は本人識別技術(イメージ:写真AC)

本人識別手法としての生体認証は、古くから犯罪予防、犯罪捜査に使われてきた。それは現場に残った指紋と本人の指紋との照合や、血痕からの血液型照合、監視カメラによる映像での本人識別、DNA鑑定のように犯行と犯人を結び付ける証拠として機能させてきた。

ただし、識別制度は高まってはいるが100%間違いないという結果ではなく、何%適合して確からしいというに過ぎず、自供も含めたその他の証拠と総合的に裁判で判断されるべき一つの要素なのである。

そしてあまり知られていないかもしれないが、最も技術発展に寄与したと思われる分野は、犯罪予防、特にテロ対策だと思っている。

出入り審査における顔認証技術の活用(イメージ:写真AC)

テロの予防は、いうまでもなく、犯行を事前に察知し抑えることである。その手段は、情報を収集すること、テロリストやブラックリストの人物の入国を阻止することなど、行動をトレースすることであろう。私の知る限り、空港での監視カメラ映像による本人特定は古くから利活用されていて、顔認証技術はその分野で進歩してきたと考えている。

空港警備においてテロリストが入国してきた場合、その人物がテロリスト本人であることを100パーセント特定することは困難である。偽造パスポートや偽名を使ったなりすましが想定されるからだ。

しかし、その状況で100パーセントでなくとも、例えば60パーセント本人らしいというだけでも、その人物の本人確認を厳しくチェックすることでリスクは減少させられる。他人の空似等の場合もあり得るだろうが、すべての人間に厳重チェックをするのは現実的ではなく、特定の対象に絞られることでチェックも有効になり、安全第一の観点を考えれば重要なのだ。