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一口にライフラインと言ってもさまざまなものがあるが、一般的には、水道、電気、ガスが挙げられる。ライフライン供給の中断が市民の生活に与える影響は非常に大きく、ライフライン事業者に期待されている事業継続の水準は極めて高い。

ただ、ガス業※ と一口にいってもその規模はさまざまである。このため、ガス業では、高い事業継続への期待に対し、限られた経営資源でどのように応えていくかを考えていく必要がある。今回は、このような特徴をもつガス業の事業継続を取り上げる。

編集部注:「リスク対策.com」本誌2015年11月25日号(Vol.51)掲載の連載を、Web記事として再掲したものです。(2016年9月23日)

ガス業の現況

ガス業は、供給するガスの種類によって、大きく2つに分かれる。LPガス業と都市ガス業である。

LPガス事業者は、石油ガスを供給する事業者であり、都市ガスは、天然ガスを原材料とするガスを供給する事業者である。LPガスは、加圧することで比較的容易に液化することから、ボンベによる個別供給が主な供給形態だが、導管を経由してガスを供給する「簡易ガス事業」と呼ばれる業態も存在する。

都市ガスは、天然ガスが極低温のみで液化することから、導管を経由したガス供給を行う。業態ごとに事業者数、供給件数、供給量を表1として取りまとめた。

事業者の規模に大きな差があるのがガス業の特徴である。

まず、LPガス販売事業者は、消費者件数こそ一般ガス事業に匹敵するものの、販売量では4分の1に満たない市場に約21,000社が存在する。一般財団法人エルピーガス振興センターの調査によれば、資本金で見ると、約9割の会社が中小企業であり、従業者数でも10人未満が8割以上である。簡易ガス事業者の規模は、その9割をLP ガス事業者が兼業で営んでおり、ほぼ同様の状態である。

次に、一般ガス事業者では、首都圏、近畿圏、中京圏をそれぞれ供給区域とする事業者3 社が、都市ガス年間販売量の7割を販売しており、資本金、従業員数なども突出した規模を有する。ただ、全体の8割の一般ガス事業者は従業員100名以下であり、10名未満の事業者も33ある。供給の中断を検討しなければならない緊急事態に活用できる経営資源という点では、事業者間で大きな差がある。

また、ガス業は、ガスの供給に必要な配管の設置やメンテナンスについて、主に管工事業を専門とする工事会社に依存する部分が大きい。ガス事業者において管工事の能力を有していることは少なくないものの、緊急事態からの復旧に当たっては、これら工事会社からの要員確保が欠かせない。

ただ、工事会社への要員確保の依頼にあたっては、事業規模がものをいう部分も大きい。中小のガス事業者であれば、なおさら準備しておくポイントとなる。