「リスク対策.com」VOL.52 2015年11月掲載記事

被災状況が一目でわかる

地震、津波、風水害、噴火など災害時に国土交通省が集めた情報を地図上に集約して表示する統合災害情報システム(DiMAPS)の運用が9月1日から始まった。鬼怒川や渋井川の決壊を引き起こした9月の関東・東北豪雨の際にもDiMAPSで集約した情報がウブ上で一般公開された。震度分布や津波情報、通行止めなどの道路情報、鉄道やフェリーの運行状況、土砂災害、河川の被害情報、ヘリによる空撮画像など国交省が集める多くの情報を一元的に地図上に示せるのがこのシステムの最大の特長だ。

東日本大震災でホンダから自動車通行データの提供を受けたGoogleが地図上に「いま通れる道」を表示した活動が発端となり、災害時にGIS(地理情報システム)を使った情報共有は瞬く間に広がった。その後も、時間経過とともに変わるニーズに合わせて、避難所や医療機関、スーパーやガソリンスタンドなどの情報を地図上にプロットする取り組みが活発に行われた。それでも、リアルタイムに掲載される情報は限られ、被害状況の一元的な管理には今なお課題が残る。 

こうした中、国土交通省は、これまで文字で公開してきた災害時の被害情報を位置情報と紐付けて地図上に可視化する統合災害情報システム「DiMAPS」を9月に一般公開した。誰でもどこからでも国交省の集約した地図情報にアクセスすることができる。4月から内部での試行運用を開始し、アップデートを重ねてきた。上空のヘリが撮影した被災地の画像もリアルタイムに地図上に表示されていく。さまざまな情報を「見える化」したことで、より早い状況把握が可能になったという。同省水管理・国土保全局防災課災害対策室地震防災係長の飯島直己氏は「国交省では、災害時の情報集約は本省内の各局や地方整備局、気象庁、海上保安庁などから集めた情報を被害報という文章でまとめ、そこから地図にプロットする方法をとっていました。しかし、東日本大震災では、道路、河川、港湾、空港など広範囲で同時多発的に被害が発生しました。当時は防災センターにいた国土地理院の職員が手作業でプロットしましたが、リアルタイムかつスピーディには対応できませんでした。その苦い経験がこのシステム開発の出発点です」と語る。

被害報を地図に示した
地図上に表示される情報は、基本的には国交省が紙で発表している被害報のうち、位置情報を伴うもの。具体的には、地震なら震度、震源、津波警報、津波注意報など気象庁発表の情報と、同省が管理する河川、道路、鉄道、海事、港湾、航空、物流などに関する被害状況だ。 

地震が発生すると、まず地震速報と津波警報が自動的に取り込まれ表示される。地図上に示される震度は気象庁が発表する「震度速報」「震源・震度に関する情報」をもとに地図上にプロットされる。