災害対策のソフト対策も強化・充実
震度5強以上で災害対策本部設置 同社の災害対策で最も目を見張ったのが、災害時のソフト対策である。独自に設置した地震計に基づき、震度5強以上の地震が三井オフィスのいずれかで観測された場合、災害対策統括本部が自動的に設置される仕組みになっている。 

構成員は総勢200人。上から司令部、統括部があり、その傘下にテナント・オーナー対応班、災害復旧班、情報収集班、外部情報収集班、支援対応班、本部緊急対応班の6班があり、司令部と統括部の間に組織支援部がある。200人はそれぞれ日常業務に近い役割を担う人員配置になっているという。平時から課長級以上の職員が、ビルメンテナンス会社のスタッフと毎日24時間体制で待機しており、東日本大震災の際も機能したという。

情報設備が充実した危機管理センター 
この災害対策組織は、先進の情報設備を備えた危機管理センターを司令塔に機能する。各センターには、72時間対応の非常用発電をはじめ、テレビ会議システム(最大12カ所同時会議可)複数の通話手段、(衛星携帯電話、専用線、電話)ノーパンクIP、自転車、ビルの各所に配置した監視映像が確認できるモニターを完備。被災現場を目の当たりにしながら、意思の疎通がスムーズに行える。

帰宅困難者対応を強化

 防災備蓄、情報発信、一般


帰宅困難者対策にも力を入れている。取り組み内容は、防災備蓄、情報配信の強化と一般帰宅困難者の受け入れ―の3つ。 

防災備蓄は、在館人口相当数の1日分の水と食糧を確保。簡易トイレや医薬品、救護機材などの備蓄も拡充する。高層ビルのエレベーターには、防災備蓄キャビネット(簡易トイレ、非常食、携帯ラジオ)も設置している。 

情報配信では、ビルの被災状況や公共交通機関の復旧状況、ビル設備の使用可否に加え、危機管理センターが集めた各地域の情報もテナント企業に提供する。同様の情報は、エントランスホールに設置されたテレビモニター等でも提供する。また、テナント企業限定のウェブサイトも新設、外出中の社員や家族にも会社の被災状況を提供する取り組みも行っている。 

主要ビルでは、一般帰宅困難者も可能な限り受け入れる方針。新宿三井ビルディングでは、モデルプロジェクトとして、一般帰宅困難者受入マニュアルを作成した。備蓄品は、水と食糧と防寒シートなど。一般帰宅困難者に関しては、各エリアの行政と連携した対策をとることにしている。 

また、テナント企業に同社の防災対策の取り組みを理解してもらい、併せて事業継続検討に資するよう、防災関連ガイドブックも発行している。内容は①三井不動産の災害時の組織体制と役割、②同社のオフィスの防災機能(耐震性能、非常用設備、備蓄品等)③災害時に備えたコミュニケー、ションと訓練。このほか、東日本大震災では、都内全体で約2割の事業所において、オフィス内のパーテーションやキャビネットなどの什器の転倒・落下移動などの被害が生じたため、当社独自の取り組みとして「オフィス什器転倒・落下防止ガイドブック」(日本語版、英語版)を作成しテナント企業に配布した。