2016/11/22
誌面情報 vol44
BCPは経営戦略
東日本大震災直後から同社BCM委員会の事務局を担当している総務部次長の喜田哲也氏は「BCPは防火・防災対策ではなく、あくまで経営戦略。経営環境変化に応じた発展的改善というポジショニングで取り組んでいる」と説明する。
同社のBCPの骨子は「社員、家族、顧客、利用者の安全確保を第一に、重要業務を継続して損失を最小限に抑え、社会的な責任を果たす」こと。そのために、「生命の安全確保」「企業資産の保全」「製品在庫の積み増しと原材料の確保」「物流手段の確保」という4つの切り口から、BCPの見直しに着手している。
生命の安全確保
生命の安全確保は、避難場所や備蓄を確保するとともに、全社員の意識改革を促す両輪で進めている。避難場所は、鳴門工場では耐震補強された高さ10m以上の施設を11カ所設置。外部階段も備え付けた。地域住民も受け入れる予定で、避難想定者数の3日分の水と食料などの備蓄を準備している。
避難場所には1500㎡のスペースがあり、計算上は1500人の受け入れが可能という。避難経路と避難場所には、停電時に自動的に20時間点灯するLED防災ライトも設置した。意識改革では、定期的に避難訓練や安否確認訓練を実施しており、直近の鳴門工場総合防災訓練では、関連会社の従業員を含め、工場で働く800人のスタッフのうち約600人が参加した。
「以前は、社員の認識にバラツキがあったが、3.11から一気に意識が変わった。南海トラフ地震が来たら大変なことになるという危機意識と、経営者のトップダウンにより本気度が全社員に浸透してきている」と喜田氏は語る。訓練には、産業医も参加し、負傷者を容態に合わせ緑、赤、黄、黒のエリアに移すトリアージ訓練も実施。安否確認も形式的に行うのではなく、津波を想定し、地震直後と、津波からの避難後の2本立てで行うなど、リアリティーを追求している。
誌面情報 vol44の他の記事
- BCP+地域貢献の新たな道 地元住民1500人を受入れ
- 特集1 BCPと地域貢献
- BCPの全体最適化 香川地域継続検討協議会
- 堤外地をBCP連携で守る 愛知県三河港明海地区
- 60万人の帰宅困難者対策 東京駅周辺防災隣組
おすすめ記事
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月23日配信アーカイブ】
【4月23日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:南海トラフ地震臨時情報を想定した訓練手法
2024/04/23
-
-
-
2023年防災・BCP・リスクマネジメント事例集【永久保存版】
リスク対策.comは、PDF媒体「月刊BCPリーダーズ」2023年1月号~12月号に掲載した企業事例記事を抜粋し、テーマ別にまとめました。合計16社の取り組みを読むことができます。さまざまな業種・規模の企業事例は、防災・BCP、リスクマネジメントの実践イメージをつかむうえで有効。自社の学びや振り返り、改善にお役立てください。
2024/04/22
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月16日配信アーカイブ】
【4月16日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:熊本地震におけるBCP
2024/04/16
-
調達先の分散化で製造停止を回避
2018年の西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県倉敷市真備町。オフィス家具を製造するホリグチは真備町内でも高台に立地するため、工場と事務所は無事だった。しかし通信と物流がストップ。事業を続けるため工夫を重ねた。その後、被災経験から保険を見直し、調達先も分散化。おかげで2023年5月には調達先で事故が起き仕入れがストップするも、代替先からの仕入れで解決した。
2024/04/16
-
工場が吹き飛ぶ爆発被害からの再起動
2018年の西日本豪雨で隣接するアルミ工場が爆発し、施設の一部が吹き飛ぶなど壊滅的な被害を受けた川上鉄工所。新たな設備の調達に苦労するも、8カ月後に工場の再稼働を果たす。その後、BCPの策定に取り組んだ。事業継続で最大の障害は金属の加温設備。浸水したら工場はストップする。同社は対策に動き出している。
2024/04/15
-
動きやすい対策本部のディテールを随所に
1971年にから、、50年以上にわたり首都圏の流通を支えてきた東京流通センター。物流の要としての機能だけではなく、オフィスビルやイベントホールも備える。2017年、2023年には免震装置を導入した最新の物流ビルを竣工。同社は防災対策だけではなく、BCMにも力を入れている。
2024/04/12
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方