トップの不作為とボトムからの圧力、負の反動
第5回:事例的考察 新型コロナ感染症
河村 廣
1967年3月神戸大学大学院工学研究科修士課程建築学専攻修了。同年、川崎重工業入社。その後、山下設計を経て70年4月神戸大学工学部助手となり、助教授、教授を経て2005年3月に定年退職、同年4月より同大学名誉教授。88年9月から10カ月、テキサスA&M大学客員研究員、04年度は東北大学客員教授、05~06年度は東北大学非常勤講師。工学博士、一級建築士。
2021/01/20
免疫防災論
河村 廣
1967年3月神戸大学大学院工学研究科修士課程建築学専攻修了。同年、川崎重工業入社。その後、山下設計を経て70年4月神戸大学工学部助手となり、助教授、教授を経て2005年3月に定年退職、同年4月より同大学名誉教授。88年9月から10カ月、テキサスA&M大学客員研究員、04年度は東北大学客員教授、05~06年度は東北大学非常勤講師。工学博士、一級建築士。
新型コロナウイルス感染症は2019年12月に中国の武漢で発症し、2020年3月にWHOがパンデミック宣言、同年中に地球上全大陸に蔓延していった。2020年12月において、一部の国で鎮静化したと言われているが、地球的規模ではいまだ増加しつつある。
我が国では昨年1月に感染者第1例が確認され、4月に第1波、8月に第2波、そして12月に第3波を迎えるに至り、12月下旬の現在は予断を許さない状況にある(その後、今年1月7日に1都3県に緊急事態宣言再発令、13日には7府県を追加)。
本稿では、連載第2回の[図5]社会的免疫進化システムを[図8]のように「トップダウンVSボトムアップ」の骨子を基本とする簡明なモデル化を行い、本図をベースにコロナ禍における種々の対応策に考察を加えよう。
現在の状況は、重症者数が重症者病床数を超えて、医療崩壊が目前に迫っている。早急に重症者病床数を増す必要があるが、病床はあっても医師と看護師が不足しており、政府や都道府県知事のトップダウン側はその補充に腐心している。第3波は第1波以後予想されていたことで、その間での医療資源拡充への不作為が問われている。
同時に、重症者数を増やさないようにする必要があり、住民に外出等の自粛を、そして業者に営業制限を呼び掛けているが、業者に対しては補償を与えなければならない。
思えば、直近の感染症歴として、インフルエンザウイルスによる1918年~1920年のスペイン風邪と2001年の新型インフルエンザがあり、コロナウイルスによる2002年~2003年のSARS、2012年~のMERSがある。トップダウン側としてそのような経験をなぜ生かさなかったのか、準備してこなかったのか、ということも問われよう。
近年、感染症の研究体制や感染症対応の医療資源の削減が進められてきたことを考えあわせれば、単なる不作為という言葉だけでは済まされない。これまでの経費削減のツケが今日の補償額や景気減速による富の喪失として回ってきたとすれば、その差額の検証を行うことが[図8]の免疫防災システムの進化をもたらすことになる。
周知のように、新型コロナ感染症は従来のインフルエンザ感染症と異なった特性を持っていることが分かってきた。
①感染後の潜伏期間が長く、発症の以前から感染する②空気感染する③気管や血管、肺だけでなく他の臓器や脳までも侵されることがある④余病のある高齢者が感染すると病状は急変し死に至ることがある⑤治癒後、再発することも後遺症が残る場合も多い⑥感染してゆく大陸によって遺伝子が変化する、などである。
一言で言えば、極めて不気味な症例である。
これらは、各国各地の病院、大学、研究所などで治療や研究を通じて得られ、国内外の学会論文報告によって公にされ集約された知見である。すなわち[図8]の右側のボトムアップ型の自発的創発的対応、すなわち獲得学習免疫によるものである。
免疫防災論の他の記事
おすすめ記事
情報セキュリティーは個人のリスク目線では通用しない
学生時代からパソコンを使いこなしてきた人が新入社員に多くいる昨今ですが、当然、個人と会社ではセキュリティーの重心が違います。また、人事異動で新たに着任した社員も、業務が変われば情報資産との関わり方が変わり、以前と同じ意識でのぞめばよいとは限りません。新年度にあたり、情報セキュリティーのルールは特に徹底したいところです。
2024/05/10
サイバーインシデント対応の基本知識と準備
本勉強会では、一般的な情報セキュリティインシデントとサイバーインシデントの違いや、その初動対応について事前に準備すべきことと合わせて、自社で手軽に訓練・演習を実施するためのポイントを解説します。2024年5月8日開催。
2024/05/09
炎上の原因はSNS上の振る舞いのみにあらず
新年度から仲間に加わった新入社員は「デジタルネイティブ」と呼ばれ、友人とSNS で交流するのがあたり前の世代です。が、学生時代と違い、社会人になれば取り巻く環境が変わり、自身の立場も変わる。うかつな投稿が「炎上」につながるケースは少なくありません。新人研修のテーマにSNSリスクを組み込むなどして教育を徹底したいところです。
2024/05/08
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年5月7日配信アーカイブ】
【5月7日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:令和5年度企業の事業継続及び防災に関する実態調査
2024/05/07
家庭の防災は企業BCPとつながっている
昨今は社員の自主防災力向上に努めている企業も多いでしょう。この時期は災害時のルール周知に余念がないと思いますが、ポイントとして提案したいのが、家庭の防災と企業BCP のつながりをしっかり伝えること。「家庭と会社は別」と考えがちですが、家庭の防災力を上げないと企業の事業継続力も上がりません。メッセージを出すよいタイミングです。
2024/05/02
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方