免疫の特性を応用した災害時対応とは?
第2回:免疫防災システムへのアナロジー
河村 廣
1967年3月神戸大学大学院工学研究科修士課程建築学専攻修了。同年、川崎重工業入社。その後、山下設計を経て70年4月神戸大学工学部助手となり、助教授、教授を経て2005年3月に定年退職、同年4月より同大学名誉教授。88年9月から10カ月、テキサスA&M大学客員研究員、04年度は東北大学客員教授、05~06年度は東北大学非常勤講師。工学博士、一級建築士。
2020/12/09
免疫防災論
河村 廣
1967年3月神戸大学大学院工学研究科修士課程建築学専攻修了。同年、川崎重工業入社。その後、山下設計を経て70年4月神戸大学工学部助手となり、助教授、教授を経て2005年3月に定年退職、同年4月より同大学名誉教授。88年9月から10カ月、テキサスA&M大学客員研究員、04年度は東北大学客員教授、05~06年度は東北大学非常勤講師。工学博士、一級建築士。
一般に免疫の仕組みは極めて複雑であり、未解明な点が多い。ノーベル賞を授与された利根川博士や本庶博士らの研究が属する、実にホットな分野でもある。21 世紀の知の革命といわれる新しい科学のパラダイムであり、複雑系の典型例であることは間違いない。
前回の[図2]で紹介した液性免疫を、工学的に応用しやすいシステムとして筆者が簡略化したのが[図3]の単純化免疫システムである(文献【3】を参考)。
同図は文献【4】で提示されたものから、抑制過程を削除するなどさらに単純化し、一部改変した。「記憶細胞」は一度感染して排除できた抗原のタイプを記憶し、以後、必要なときに有効な抗体を産生する細胞である。「抗体産生細胞」は遺伝子レベルで自律的に淘汰、交叉、突然変異、増殖を繰り返し、常に多様な抗体の産生が可能な待機中の細胞である。これをもとに、震災時の防災や減災への応用性に考察を加えてみたい。
本システムが有する特性は、次のようなものである。
①多様性(淘汰、交叉、突然変異)
②分業性(自律分散、適応性)
③補充性(増殖)
④進化性
⑤ユビキタス性
上記は文献【5】からヒントを得ているが、ここでは、進化とユビキタスの追加を行っており、防災時に免疫の特性を発揮させるのに不可欠の特性となる。
※参考文献
【3】河村廣「地震防災学の定量的グランドスキーム-免疫防災システムとその設計-」(日本建築学会大会学術講演梗概集・九州)2007 年8 月、pp.449~450
【4】大内東、山本雅人、川村秀憲、柴肇一、高柳俊明、當間愛晃、遠藤聡志「生命複雑系からの計算パラダイム」(森北出版)2003 年8 月
【5】多田富雄「免疫の意味論」(青土社)1993 年4 月第1 刷、1996 年11 月第31 刷
免疫防災論の他の記事
おすすめ記事
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月16日配信アーカイブ】
【4月16日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:熊本地震におけるBCP
2024/04/16
調達先の分散化で製造停止を回避
2018年の西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県倉敷市真備町。オフィス家具を製造するホリグチは真備町内でも高台に立地するため、工場と事務所は無事だった。しかし通信と物流がストップ。事業を続けるため工夫を重ねた。その後、被災経験から保険を見直し、調達先も分散化。おかげで2023年5月には調達先で事故が起き仕入れがストップするも、代替先からの仕入れで解決した。
2024/04/16
工場が吹き飛ぶ爆発被害からの再起動
2018年の西日本豪雨で隣接するアルミ工場が爆発し、施設の一部が吹き飛ぶなど壊滅的な被害を受けた川上鉄工所。新たな設備の調達に苦労するも、8カ月後に工場の再稼働を果たす。その後、BCPの策定に取り組んだ。事業継続で最大の障害は金属の加温設備。浸水したら工場はストップする。同社は対策に動き出している。
2024/04/15
動きやすい対策本部のディテールを随所に
1971年にから、、50年以上にわたり首都圏の流通を支えてきた東京流通センター。物流の要としての機能だけではなく、オフィスビルやイベントホールも備える。2017年、2023年には免震装置を導入した最新の物流ビルを竣工。同社は防災対策だけではなく、BCMにも力を入れている。
2024/04/12
民間企業の強みを発揮し3日でアプリ開発
1月7日、SAPジャパンに能登半島地震の災害支援の依頼が届いた。石川県庁が避難所の状況を把握するため、最前線で活動していた自衛隊やDMAT(災害派遣医療チーム)の持つ避難所データを統合する依頼だった。状況が切迫するなか、同社は3日でアプリケーションを開発した。
2024/04/11
組織ごとにバラバラなフォーマットを統一
1月3日、サイボウズの災害支援チームリーダーである柴田哲史氏のもとに、内閣府特命担当の自見英子大臣から連絡が入った。能登半島地震で被害を受けた石川県庁へのIT支援要請だった。同社は自衛隊が集めた孤立集落や避難所の情報を集約・整理し、効率的な物資輸送をサポートするシステムを提供。避難者を支援する介護支援者の管理にも力を貸した。
2024/04/10
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月9日配信アーカイブ】
【4月9日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:安全配慮義務
2024/04/09
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方