大切なのは、どう実践していくか


Q、 2000 年の食中毒事件と、2002 年の牛肉偽装事件、一連の事件の本質は何だったと思われますか?

会社の体質だと思います。もちろん他にもいろんな要素がありますけど、一番大きかったのはトップダウンで縦割り、自由に物が言えない内向きな組織体質でしょう。

Q、就任された当初の印象を覚えていますか?

想像外でした。あれだけの事件を起こして大騒ぎになっていたわけですから、かなり皆ピリピリとしているんじゃないかと思ったのですが、意外にそうでもなかった。それと、社員の皆さんがとても親切で、人柄がよく、イメージとのギャップを感じました。

当時、朝、出社すると私の机の上には毎日のように創業者の書いた言語録だとか、過去の会社のいい取り組みなどがまとめて置かれていました。最初は、私をけん制しているのかって誤解していました。それが、本当は、「雪印って、こんなにいい会社なんだよ」ということを私に伝えたい、“雪印大好き人間”がたくさんいるということに気付いたのです。

Q、 この会社なら、立ち直れるという感じはありましたか?

ありましたね。私は倒産するとは思いませんでした。少なくても会社の体質としては。それはかなり早い段階から感じていました。

Q、 一方で、再生をしながら、課題、難しさを感じたことは?

いかに定着、徹底させていくかです。仕組みをつくることは頑張れば誰でもできますが、定着徹底させることが難しいわけです。例えば、「雪印乳業行動基準」を定着させるために、各部署ごと必ず月1回、15 分でも30 分でもいいから、何かやるということを決めました。最初は何をやっていいのかも分からないでしょうから、読み合わせでもいいということにしました。とにかく少しずつでもいいので繰り返すことで定着させていくのです。

1つの仕組みとしては、残業みたいな形でやっては駄目ということにしました。つまり、業務時間内にやりなさいと。そのかわり、いろいろなツールも提供しました。例えば、こういう場合、あなたならどうするかという事例集や問題集も作りました。そうしたら、いつの日か自分たちで問題集を作る工場が出てきて、それが全社に広まって、いろんな部署が自分たちのケース集や、問題集を作り始めるようになったのです。今では、各部門の事例集や問題集がお互いにネットから引き出せるようになっています。

面白いのは、正解がないような問題が増えてきたことですね。どう判断したらいいか分からないようなことを、皆が議論する機会が増えてきました。これはとてもいいことだと思います。

Q、 不祥事の本質である「内向き体質」を実感されたのはいつぐらいのことですか?

就任後、すぐに、各工場をまわって、普通の社員と意見交換をする場を設けてもらったのですが、その時に社員の方々から言われたのは、前は、社長も役員も一度も工場に来たことはない、役員とこうやって話すのも初めての経験だということです。上に向かって意見を言うなんてことはできなかったのでしょう。ここ(本社7階)も、昔は役員のフロアで、赤いじゅうたんが敷かれていたんですよ。あれには、本当にびっくりしましたね。

Q、 社外取締役に就任されて9年になります。会社の体質は変わりましたか?

変わりましたね。行動基準をつくるとき1500 人もの方から意見が出てきたときは本当に嬉しかった。最初にヒアリングした時は、上司がいると意見が出なくて、上司は外に出てもらって話し合いをしたものです。そうしたら、ヒアリングの後に、CSR室に「今日はどんな意見が出た」なんて問い合わせがあったくらいです。本当に変わりました。

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