リスクマネジメントの高度化のための3つのポイント

三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
GRCコンサルティング部
部長/プリンシパル 阿部功治氏
ディレクター 柳谷公彦氏
マネージャー 山内哲也氏

近年、気候変動や人権などの社会課題に対するステークホルダーの要求を経営戦略に反映し、事業を通じて社会課題を解決していく動きが多くの企業で広がっています。同時に、これまであらかじめ想定することが難しかった「エマーシングリスク」が顕在化してきています。当社が2022年に行ったGRC(ガバナンス、リスクマネジメント、コンプライアンス)に関するサーベイの結果によると、ESGリスクの検討が行われていない企業は28.8%、ESG関連リスクをリスク管理プロセスとは別管理している企業は27.7%でした。これは、多くの企業がCSRの延長線上でサステナビリティを発展させてきたことが要因と考えられますが、エマージングリスクが増えている今、従来のリスクマネジメントの高度化が求められるようになっています。

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そこで、リスクマネジメントを高度化するポイントを以下の3つ観点から整理してみます。

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1 適切なリスクテイクのための事業ポートフォリオ管理

日本企業がこれからの不確実性の高い時代を乗り切るためには、リスクの低減や回避という従来の「守り」のリスクマネジメントだけではなく、あえて適切なリスクを取って企業価値を向上させていく「攻め」のリスクマネジメントが重要視されるようになってきました。それに伴い、リスクマネジメントとして事業ポートフォリオを利用した事業管理という考え方が広がっています。当社が2022年に行ったGRCサーベイの結果によると、取締役会において事業ポートフォリオの議論が行われている企業は29.3%、事業ポートフォリオの定期的な見直しが行われている企業は23.7%でした。また、事業ポートフォリオを開示して投資家との対話に利用している企業は12.4%となっています。その一方で、ポートフォリオを使った事業管理を行っていない企業は45.9%にものぼります。日本企業において事業ポートフォリオを利用した事業管理がまだ十分に浸透しておらず、課題となっていることが分かります。

実際にわれわれが事業ポートフォリオマネジメントの現状を評価し、高度化するために行った取り組みをご紹介します。現状を評価する際には経済産業省の「事業再編実務指針」(2020年7月)や同業他社の公開情報等を収集し、ベンチマークとしました。

プロセスは大きく3つのStepに分かれています。

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Step1では、初期調査および事例分析を実施。現状や課題を整理するとともに、他社の事例についても収集・分析を行いました。

Step2では、現状評価および高度化の余地があるかどうかについて論点を整理しました。ここでは社内関係者へのヒアリングを行い、高度化に向けた論点を整理しています。

Step3では、高度化の方向性を検討してアクションプランを策定しました。それぞれの論点ごとに社内のキーパーソンと協議を行い、高度化の方向性を検討。次にアクションプランとして、実施タスクや実施責任者、期限などを策定していきました。