株式会社富士通ゼネラル
Being Innovative Group
エアラブル事業部
マネージャー 沼上理氏

職場における熱中症により、毎年20人前後の方が亡くなられていると言われています。また、熱中症によって4日以上仕事を休んでいる人の数は600人というデータも出ています。私たちは空調機器を主力とするメーカーとして、過酷な労働環境に寄り添い、安全と健康、快適を提供したいという理念のもと、商品開発に取り組む中で2020年4月から3年にかけて200社以上の現場を訪問し、さまざまなお悩みを伺ってきました。

 

現場の声を基に、過酷な労働現場に寄り添い、身体を冷却する商品を開発

現場では、「基本的な対策を実施しているものの、2022年には十数件の熱中症が発生した」「暑さ対策を強いられることによって作業効率が落ち、作業遅れが発生する」、などの声が聞かれました。熱中症の被害を防ぐため、厚生労働省も「熱中症クールワークキャンペーン」と題してキャンペーンを行っておりますが、4月の準備期間にするべきことの一つに、「身体を冷却する機能を持つ服の着用も検討」という項目がありました。

このようなことを踏まえ、私たちは過酷な労働現場に寄り添い、安全と健康、快適を提供したい、との思いからウェアラブルエアコン「Cómodo gear(コモドギア)」の開発を進めて参りました。特に開発の重点を置いたのが、炎天下などの空調機が使えない領域をカバーすることです。猛暑対策製品としてはさまざまな製品がありますが、例えば保冷剤などは手軽に使えて冷却機能も高い半面、短時間しか効果がありません。また、ハンディファンなど持ち運びができるものもありますが、冷却力が弱いという課題もあります。

逆にしっかり冷えるものとなると、ヒートポンプ式やクールベストなどがありますが、これらは重量が大きいため動きが制限されてしまい、現場の悩みを解決することができません。そこで私たちが目指したのが、次の3つの課題を解決する製品です。

・40℃以上の環境で冷えること
・移動が可能であること
・長時間使用できること

これらの3つの領域を解決するソリューションとして生まれたのが、「ウェアラブルエアコン(身につけるエアコン)」という製品です。

ウェアラブルエアコンの特長

ウェアラブルエアコンは、現在までに国内企業350社以上に採用されています。これまでは建築関係や工事現場、物流倉庫や製造業で多く導入いただいておりましたが、2023年に商品を改良し、性能を向上させたことにより、鉄鋼業や化学プラント、発電所など、より過酷な現場での採用が内定しています。

現場からは「40度以上の環境で効果のある商品がない」、「粉塵環境に耐える商品がない」というような声も聞かれたことから、冷却性や装着性を向上。実際に製品を使用いただいた方からは、「炉前作業でもよく冷えた」、「防護服を上からかぶせても冷えが弱まることがない」などの評価をいただいています。

ウェアラブルエアコンでは、頸動脈を狙い撃つ

医学分野の有識者などからは、熱中症治療として頸部冷却する方法は、医療分野でもよく使用される手法と言われています。そのため、本商品は首に装着して使用する仕様になっています。首に巻いて頸部を含めた首周りを冷却することで、従来のエアコンとは違い、直接人体を冷やしたり温めたりできるのもウェアラブルエアコンの特長です。頸部を冷やす効果は学術論文も多数提示されており、猛暑対策への有効性も期待できる「頸部冷却」について医療の専門家をお呼びして技術講演会を行いました。

ウェアラブルエアコンがどのように頸動脈を冷却しているのかについて少しご説明しましょう。ウェアラブルエアコンはペルチェ素子の排熱を「水冷式」と呼ばれる仕組みを採用しています。使用しているのはペルチェ素子という半導体で、これを頸部2カ所と首の後ろの計3カ所に入れています。

 

ペルチェ素子に電気を流すことで冷やしたり温めたりすることができますが、内側が冷えると裏側が発熱するため、ポンプで水を送って熱を吸収し、チューブで水を戻し、ラジエーターファンで排熱するという仕組みをとっています。これは、エアコンに例えると冷媒を水に置き換えて循環するシステムと同じです。ペルチェ素子を使ったネッククーラーで水冷式を採用しているのは、おそらく当社だけでしょう。

実際に50代男性にウェアラブルエアコンを装着してもらい、現場想定の環境温度に対し皮膚の表面温度は17℃低くなった(40℃環境で表面温度23℃)という結果が出ています。

50℃を超える環境でも皮膚の表面温度は約28℃になり、冷却性が保たれていることがシミュレーション結果で検証されました。

  • ※コモドギアはWINヒューマン・レコーダー(株)のウェアコン®技術をベースに当社が商品化しました。
  •  

軽量で持ち運びができ、低コスト化も実現

ウェアラブルエアコンのバッテリーは、ウェストポーチやボディバッグに入れることができるほか、ワークベストという形で背中に装着することも可能です。また、暑さ対策とエネルギーコスト削減の両立にも成功しています。電気料金は1台当たり月151円ほどですから、例えば15台導入して4カ月間利用したとしても、約8,000円しか電気代のコストがかかりません。スポットクーラーなどの機器を導入した場合と比較すると、かなりのコスト削減効果を実感いただけます。

 

ウェアラブルエアコンはECサイトを通じてオンラインで購入していただくこともできますし、現場に担当者が伺って機器の説明なども行います。安全性や導入事例なども具体的にご紹介させていただきますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。