社内向けにBousaizを説明する際に西原氏が使ったのが、昨年4月の熊本地震での本社対策本部の写真。熊本地震で、熊本市のグループ会社で半導体製造装置の保守サービスや周辺機器を開発する株式会社SEBACSと、益城町にあるSCREEN熊本がダメージを受けた際に収集した数多くの情報をホワイトボード上に整理。西原氏は数多くの情報が隙間なく書き込まれたホワイトボードがBousaizに取って代わると写真を見せて説明。「これでBousaizの役割をイメージでき、みんなが納得して導入できた」と西原氏は振り返る。

現代のインフラとして不可欠な半導体の製造装置を供給するSCREENには、海外の大手半導体メーカーから厳しい品質管理体制が求められてきた。SCREENの装置や保守パーツの供給が止まると、半導体の生産が停止し世界的な混乱を引き起こすからだ。特に2001年に米国で同時多発テロが起きた後は、その影響を受けた大手の顧客からの要求が変化している。品質監査にディザスターリカバリーが含まれるようになり、事業継続の取り組みが不可欠になった。

このため、2000年代の半ばには半導体事業部が先行してBCPを構築。この体制が現在のホールディングスとしてのBCPにつながっている。

電子業界の世界的CSRアライアンスであるEICC(Electric Industry Code of Conduct)の行動規範に従って行われた監査では、滋賀県にある彦根事業所の工場のドアノブが全てワンアクションで開くタイプに交換された。これは素早い避難のための措置だった。「一例にすぎないが、このレベルの対応が取引条件になっている。こういった監査が定期的に入っているので、弊社の危機管理、BCPは否応なくレベルアップします」と西原氏。SCREENは目標復旧時間を設定しているが、これは東日本大震災のときの要求から導かれたものだ。

SCREENホールディングスのBCPでは、災害が起きると3種類の対策本部が立ち上がる。1つはホールディングスとして災害対応全体を指揮し、管理する「本社災害対策本部」。もう1つは被災拠点で従業員や来客の安否確認、被害状況の確認、救護、二次災害の防止措置など主に初動対応を行う「現地対策本部」。そして事業再開に向けた生産現場の修復や物流、業務システムの再構築などに動き出す「復旧対策本部」だ。この復旧対策本部は中核となる各事業会社に設置される。

災害が起きると、3種類の対策本部が立ち上がる

例えば、彦根事業所が被災すると、本社対策本部と彦根事業所の現地対策本部が立ち上がる。そして彦根事業所内に工場がある半導体機器事業の中核事業会社SCREENセミコンダクターソリューションズと、フラットパネルディスプレイ機器事業の中核事業会社SCREENファインテックソリューションズに復旧対策本部が設置され、そこにそれぞれの子会社と連携して対応する仕組みだ。それぞれの対策本部が事業継続に向け、分担した役割を実行する。だからこそ対策本部間での情報共有と情報連携が重要になる。

現在、各災害対策本部のメンバー約400人がBousaizに登録されている。本社や事業所、事業会社などの所属に沿ってグループ化され、届けるべき人に漏れなく情報が行き渡り、不必要な情報の拡散を防ぐ「情報の共有と統制」がBousaiz内で行われている。

ここで交わされる情報は、現地対策本部なら安否確認、インフラや建屋の被害状況、交通網の被害状況など。各事業会社の復旧対策本部は購買先の被害や生産現場の状況、出荷影響などを入力する。そして、掲示版を通した双方向の情報共有を行う。これら入力された情報をもとに、被害の全体像や対策の進展などを俯瞰して把握できるのがBousaizの強みだ。