熱中症の予防対策に関する具体的な取り組み例

熱中症の予防対策には事前準備が非常に大切です。具体的な取り組みとして、暑さ指数計の整備、暑い日が生じた場合に作業を中止する可能性があることも視野に入れた作業工程の策定などもポイントです。暑さ指数の基準を設け、基準値から1℃上がった場合には1時間あたり15分休憩を取らせるなど、熱中症対策マニュアルを作成している企業もあります。

建設業のように、元請や下請など多くの事業者が関わる事業の場合、無理な工程を発注者が強制したことによって受注者側で熱中症による死傷事故が発生してしまうと、発注者や元請にも責任追及がいく可能性があります。それだけでなく企業の信用も大きく揺らいでしまいますので、現場で熱中症対策を進める際には、発注元や元請などと連携し、共同で対策を進める体制を整えましょう。

熱中症予防に向けた労務管理については、「作業環境の管理」「作業管理」「健康管理」の3つの観点から管理を行うことがポイントです。

作業環境の管理・・・暑さ指数計を備える他、休憩時間の確保や休憩場所の整備、休憩場所に体を冷やすような水や氷、塩分を補給する塩飴やスポーツドリンクなどが置かれていることなどが求められます。冷却機能付きの服装や日除けのテントの設置なども、場合によっては検討していきましょう。

作業管理・・・その日の暑さや暑さ指数の状況に応じて、作業を中断したり休憩回数を増やすなどの判断ができるようにしましょう。暑い日は作業時間をずらして日陰になる時間に作業をすることや、作業開始前のミーティングは涼しい場所で行うなどの工夫も有効です。

健康管理・・・熱中症の発生は、体調や健康状態が大きく影響しますので、作業開始前にその日の体調を確認することが大事です。体調が悪いことを正直に申告できる雰囲気を作るといいでしょう。

また、作業中は、管理職だけでなく従業員同士もお互いの健康状態を確認するようにし、異変を感じたときには早急に病院に搬送しましょう。熱中症は容態が変化するのが早く、その日のうちに亡くなる割合が非常に多いものです。具合が悪くなってしまった人を一人にしないことも大切です。

健康管理では、研修等を実施して、管理職や従業員の熱中症対策についての理解を深めることが有効です。

参考:熱中症予防に向けた労務管理

就業規則や労使協定の見直しのポイント

先ほど挙げたような対策を実際に行うためには、就業規則の変更が必要な場合があります。例えば、体調が悪いときに遅刻・早退する従業員が時間単位の有給休暇を取得できるようにするためには、「時間単位の年次有給休暇の取得」について就業規則に定める必要があります。

また、月60時間超の時間外労働が発生しそうなときには、就業規則や賃金規程で60時間超時間外労働の割増賃金の計算方法について定めておかなければなりません。労働者の安全や健康に配慮した熱中症予防対策を実施する上で、必要な事項が現行の就業規則に定められているかを確認しましょう。

もう一つ重要なのが、労使協定の締結です。労働条件を変えるためには、就業規則の見直しだけでなく、労使協定の締結や見直しが必要になるケースがあるからです。

労働基準法では事業所ごとに一斉に休憩を与えることが原則となっていますが、業務の都合に合わせて休憩を取る時間をずらしたり、一人一人バラバラに取れるようにするなどの場合には、一斉付与の適用除外について労使協定で合意しておかなければなりません。

このほか、時間外労働や休日労働の時間数や日数を増やす場合、時間単位の年次有給休暇を取得させる場合、月60時間超時間外労働の割増率引き上げ分について有給休暇を付与する場合も労使協定の締結が必要となります。

熱中症対策においては、作業環境の整備や従業員の健康管理だけでなく、就業規則などのルール面の整備や見直しも必要です。本セミナーをきっかけに、さまざまな環境整備に取り組んでみてください。