リスク対策.com Vol.44

 

特集1
地域を守るために企業は何をすべきか?
BCPと地域貢献

企業の事業継続計画の取り組みに併せて、地域全体をいかに早期に復旧させるのか地域貢献の議論が各地で始まっている。徳島県鳴門市に本社を持つ大塚製薬工場は、自社のBCPの見直しに加えて、大規模災害時の地域貢献のあり方として、近隣住民の工場への受入れ準備などを進めている。地元に住んでいる従業員も多く、地域の継続なくして会社の存続はあり得ないからだ。香川県では、香川大学が中心となり、四国全体の地域継続計画(District Continuity Plan)の策定を進めている。個々の企業のBCPに、ビジネスの視点だけでなく地域継続という上位概念を植え込み、優先業務などの全体最適化を図っている。自動車の部品の関連会社が集積する愛知県豊橋市の三河港では、津波のリスクにさらされる工業団地内の企業が結束して地域全体を守る取り組みに乗り出した。行政支援に頼るだけでなく、資源を持ち寄って巨大災害に備えるためだ。日本の経済活動の中枢機能が集中する東京駅周辺でも、大手町、丸の内、有楽町地区にある企業が結束して、首都直下地震に備える。帰宅困難者の受入れや避難誘導など訓練を繰り返し、防災機能を強化している。「地域貢献」という偽善活動をしているわけではない。災害時に、本来やるべきこと、できることをしなかったという悪評が起きれば、自分たちの利益を損なうことになり得る。地域共生は、自社の利益を確保するための活動でもある。

 ◆地元住民1500人を受入れ 株式会社大塚製薬工場
 ◆BCPの全体最適化 香川地域継続検討協議会
               西日本高速道路株式会社四国支社
               株式会社富田組
 ◆堤外地をBCP連携で守る 愛知県三河港明海地区
 ◆多勢を無勢で迎え撃つ 東京駅周辺防災隣組
 ◆地区防災計画の先進事例 北海道石狩市

 

■巻頭インタビュー 国土強靭化防災担当大臣 古屋圭司氏
  国土強靭化で国際競争を勝ち抜く

 

■特集2 大槌町取材記 被災地からの復興計画への提言<下>

地域のニーズに応えられる企業

東日本大震災で壊滅的な被害を受けた岩手県大槌町の旧市街地には、店も工場も無ければ住宅もない。平坦な土地が海から山際までただただ広がり、ところどころで盛土などの工事が行われている。町の計画によれば、防潮堤の整備や盛土などは28年度までに終わらせ、30年度までに新たな市街地を整備する。最大の課題は産業の復興だ。働き先がなければ、住民は町を去る。東日本大震災前は1万5000人だった人口が、震災後は1万3000人にまで減った。実際には1万人を割り込んでいるとの見方もある。震災により人口減少、高齢化を数十年分も先取りしてしまったこの地域での企業の存続は厳しい。それでも再生に向けた取り組みは始まっている。そこから学べることは、地域への貢献が、いかに事業継続において重要かということだ。震災後3年を経過した大槌町の産業復興の試みを取材した。

 ◆解散の危機からの復興釜石地方森林組合
 ◆悲しみを乗り越え水産業を守る ど真ん中おおつち協同組合
 ◆2台のバスで地元ニーズに応える 有限会社城山観光
 ◆被災地におけるコミュニティビジネス 一般社団法人おらが大槌夢広場

 

■Topics
 ◆建物全体を揺らす世界初の実験施設
 ◆なぜ震災関連倒産は全国で今なお続くのか?
 ◆BCP策定 大企業は5割以上
 ◆東京ドームシティで700人参加の訓練

■FOCUS ロンドンオリンピックに学ぶ持続可能なイベント運営

■New Products

■TIEMS日本支部会報 第6回パブリックカンファレンス

■情報書き消しボード使用例

■シリーズ 
 サマンサのBCP英語講座
 おかしくないか?日本の防災対策 齋藤實
 災害から命を守れ 熊丸由布治
 レジリエンスに関する世界の調査研究 田代邦幸
 レジリエンスを巡る旅 昆正和
 業種別BCPのあり方 小山和博
 インターネット新時代の労務リスクマネジメント 毎熊典子
 情報セキュリティ対策の実施及び見直しのポイント 森徳行
 BCP担当者が最低限知っておきたい労務リスクマネジメント 岡本裕明