令和8年熊本地震では、被災者支援や避難所運営の現場でデジタル技術の活用が進んだ。ポケットサイン(東京都新宿区)が9月18日に公表した「くまもとアプリ」の利用データ分析によると、避難者の行動傾向や災害ボランティアの参加実態が明らかになった。

避難所利用データから「夜だけ避難」の傾向も

くまもとアプリは、ポケットサインが提供するシステムを基盤として、熊本市が提供する公式アプリ。平時は、地域活動やボランティア活動に参加した際の証明書発行機能などを提供している。令和8年熊本地震では、避難所の入退出や災害ボランティアの受付などでも使用した。

避難所利用データの分析からは、避難者の特徴的な行動が明らかになった。避難所で複数回受付を行った利用者の記録を分析したところ、入所は午後6時から10時、退所は午前5時から8時に集中していた。夕方に避難所へ入り翌朝退所する利用パターンは全体の48%と約半数を占めた。ポケットサインでは「日中は自宅の片付けや仕事などを行いながら、夜間のみ避難所を利用した可能性がある」と分析している。また、アプリによるデジタル受付をした避難者の67%は同じ避難所を継続利用していた一方、33%は複数の避難所を利用していたことも確認された。
こうした傾向について、熊本市防災計画課の担当者は、「昼間と夜間で必要となる支援内容が異なる可能性が示された。食料配分の方法や就寝スペースの確保、プライバシー保護、通信・充電環境など、避難者ニーズに応じた運営の検討が必要になる。今後もデータ分析を進め、どのような環境整備が避難所利用につながるのか検証していきたい」と話した。


ボランティア参加実態も可視化

くまもとアプリの画面イメージ(写真提供:ポケットサイン)

熊本市は地震発生後、県内自治体の災害ボランティア募集情報をアプリに集約し、9月18日時点で11市町の募集情報を掲載した。8月4日から9月4日までの1カ月間で、11市町の災害ボランティアセンターを通じて延べ346人※がアプリを利用して、ボランティア活動を行った。参加者は熊本県内のほか、東京都や福岡県など全国29都道府県から参加した。年代別では50代が27.7%で最多だった。
(※活動当日に「くまもとアプリ」を利用し、ボランティア活動を記録するデジタル活動証明書を取得した利用者数)

災害ボランティアの募集や受付のデジタル化は、自治体職員の業務負担軽減にもつながっているという。くまもとアプリを運営する熊本市地域政策課の担当者は、「限られた人員を被災状況の把握や支援ニーズの調査に振り向けるためにも、募集・受付業務のデジタル化は有効だ。受付負担が軽減され、ボランティアのマッチングや支援調整により注力できる」と話す。


今回の分析は、避難所運営やボランティア受け入れの実態をデータとして把握できる可能性を示した。災害対応の改善に向け、行政によるデータ活用の重要性は今後さらに高まりそうだ。