企業にとって、これまで経験したことのない新規プロジェクトを成功させるためには、他のプロジェクト以上に慎重で適切なモニタリングを必要とする。適切にモニタリングするためには、その前提として、妥当な目標設定と目標達成のための合理的な戦略策定が重要となる。そのため、企業を取り巻く将来の姿をバックキャスティングによる不確実性分析を実施し、プロジェクトの達成に向けた計画を立案する。具体的には、外部環境を分析し(例えば、政治、経済、社会、技術に基づく分析: PEST分析)、変化の要因となる推進力(Driver)を洗い出す。そして、その要因のうち、不確実性の高さ、影響力の大きさといった2軸のマトリクスから、起こり得る将来の状況を具体的な複数のストーリーとして描き出す(シナリオ設定)。その上で、各シナリオにおいて自社が取り得る最善の道筋(=戦略)を事前検討する(「シナリオプランニング」と呼ぶ)ことが多い。ただこの目標設定と戦略策定は、検討時点の経営環境を前提にしたものである点に十分留意しなければならない。その後の環境変化によって当初描いたシナリオから現実は乖離する。そして、期中にさまざまな対応を要する。場合によっては、当初の目標、戦略を変更する必要もある。その要否を判断するため、定期的なモニタリングが必要となる。
プロジェクトマネジメントの世界で定着している実務として、トリガーポイントマネジメントがある。プロジェクトの完成にとって障害となる問題や課題は、突然発生するというものではなく、何らかの兆候があり、それが発展する形で、現実の問題や課題を顕在化させるものと考えられる。リスク管理と重ね合わせると、現実の損失へ結びつく可能な要因としてリスク概念を捉えるなら、リスクが発現しないよう適切な対応をとることにより、現実の損失を未然に防ぐことが可能になる。(図表-1参照)
トリガーポイントとは、リスクと問題・課題の境界を示すポイントと考えることができる。プロジェクトの目標達成を危うくするリスクの発生を予め洗い出しておくと、プロジェクトの成功に導くモニタリングが可能となる。プロジェクトを成功に導くために、バックキャスティングによる環境変化の分析と、トリガーポイントマネジメントを実施することが有用と考えられる。
具体的には、まずバックキャスティングにより中長期の環境予測に基づく戦略についてのグランドデザインを描く。そして、中長期戦略を構築するにあたっての重要な要素(マテリアリティ)を洗い出し、その兆候をトリガーポイントとして設定し、その後の情報に基づき定期的に観測することとなる。
しかしながら構造的不確実性が介在する場合には、当初のシナリオの設定やその目標達成を阻害する要因への対策に考慮されている状況以外の想定外の出来事が多く発生する可能性がある。このような事態が常態化することも想定するなら、モニタリングの頻度と精度を高め、変化への適応力を強化する必要がある。
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