マイナンバーの誤登録により、医療・介護関連の給付費が別人の公金受取口座に振り込まれた事案が埼玉県所沢市で発覚した。マイナンバー制度を巡り、お金が実際に別人に振り込まれたのが確認されたのは初。政府内では「ひも付け作業を少人数で手作業で行っている限り、登録ミスは今後も避けられない」(関係者)との見方が強く、秋までの総点検で、誤登録によるトラブルがさらに広がる可能性が高そうだ。
 所沢市は14日、後期高齢者医療制度に加入する80代女性が受け取るはずの5万7516円が、別人の公金受取口座に誤って振り込まれたと発表。振込先は同姓同名で、生年月日も同じだった。女性は市外に転出していたが、転居前の市が引き続き保険者となる特例措置の対象で、手作業でひも付け作業をした際、十分確認しなかったのが原因とみられる。
 マイナンバーとのひも付けミスは障害者手帳でも判明している。宮崎県では知的障害者向けの「療育手帳」で別人の情報をひも付けていた事案が2336件あった。同県のケースでは、ひも付け作業を職員1人で担当しており、チェック体制に限界があった。
 限られた人数で手作業をしている実情は他の自治体も同様で、厚生労働省の幹部は「自治体が作業している以上、実態を把握しきれず、もどかしい部分もある」と話す。
 宮崎県の事案を受け、加藤勝信厚労相は14日の記者会見で「手作業でのミスを前提とした上でどう防ぐかを検討したい」と説明。全国の点検結果などを踏まえて再発防止策をまとめる意向を示したが、有効な再発防止策が打ち出せず、個人情報の漏えいや誤った振り込みが今後も続けば信頼低下に拍車が掛かるのは必至だ。 

(ニュース提供元:時事通信社)