36人が犠牲となった2019年の京都アニメーション第1スタジオ放火殺人事件は、吹き抜け構造のらせん階段を伝って瞬く間に高熱の煙が建物内全体に充満し、発生から2分後に避難不可能な状態となった。一方、避難は約7分後まで続き、トイレのドアを閉めて難を逃れた人もいた。
 京都市消防局の分析によると、7月18日午前10時31分ごろ出火し、3階建て延べ約691平方メートルが全焼した。社員の一人は、青葉真司被告(45)が玄関から侵入し、1階中央フロアでらせん階段付近に液体をまいてライターで火を付ける様子を目撃していた。
 火災シミュレーションによる検証で、出火10秒後、らせん階段に炎と煙が吹き上がり、避難経路として使えなくなった。30秒後には屋内階段にも煙が満ち、3階から階下への避難が困難に。1分後、100~300度の燃焼ガスが2、3階に充満し、2分で建物内全体が高熱状態となった。
 避難行動は数秒後から約7分間続いた。2階ベランダを使った避難は約1分半後に始まり、3階にいた人も含め25人が飛び降りた。約6分後に1階から救助された3人は、逃げ込んだ女子トイレのドアを閉鎖したことで煙の流入を防ぎ、助かった。3階から唯一救助された1人は、煙が充満する中、偶然見つけた窓から顔を出して屋外のはしごを見つけ脱出できた。
 建物内には1階に12人、2階に31人、3階に27人の計70人がいた。死者は3階が20人と最も多く、2階は11人、1階が5人で、うち33人は建物内に取り残された。 

(ニュース提供元:時事通信社)