九州北部で7月10日に線状降水帯が発生し、大雨特別警報が出された際、大気下層の水蒸気量が極めて多く、積乱雲群の形成につながったことが分かった。気象庁が熊本市に整備した「マイクロ波放射計」の観測成果で、2017年の九州北部豪雨など、近年3回の梅雨期の線状降水帯発生時より多かったとみられる。仙台市で開かれる日本気象学会で25日に発表される。
 7月10日朝は梅雨前線が対馬海峡に延び、南西の海上から九州北部に向かって大量の水蒸気が太平洋高気圧の縁を回るように流入した。同庁気象研究所の荒木健太郎主任研究官は「線状降水帯にも『個性』があり、上空の水蒸気量や気温が事例によってかなり違う。実態の解明を進め、予測精度を向上させたい」と話している。
 マイクロ波放射計は大気や雲から自然に放出される微弱な電磁波を観測し、水蒸気量や気温の高度分布を推定する。地球観測衛星での活用が知られるが、気象庁は今年3月までに、房総半島から対馬や奄美大島にかけての地上17地点に整備した。ゴム気球を1日2回飛ばすラジオゾンデ観測に比べ、ほぼリアルタイムで上空の状態を把握できる。
 近年の7月上旬の豪雨との比較では、大気下層の水蒸気量は今回が最も多く、18年の豪雨、20年の豪雨、九州北部豪雨の順番だった。気温は下層では最も高かったが、その上空には寒気が流入しており、九州北部豪雨に次いで2番目に低かった。 

(ニュース提供元:時事通信社)