【ベルリン時事】移民や難民の受け入れに寛容な姿勢で知られるドイツが、水際対策の強化を打ち出し始めた。難民の記録的な増加に直面して、ショルツ左派政権の支持離れに歯止めがかからず、政策の修正を余儀なくされている。
 2015年の「欧州難民危機」当時、メルケル首相は「私たちはできる」と寛容政策を訴えて称賛を浴びた。しかし昨年のドイツへの転入者は、ロシアの侵攻を受けたウクライナからの避難民約110万人を含めて計270万人弱で、15年を上回った。
 収容施設が不足し、財政も圧迫。最近では中東情勢の悪化を受けて反イスラム感情も高まっている。独紙ビルトが今月1日公表したメルケル氏の「できる」発言に対する評価を聞いた世論調査では、71.9%が同意しないと回答した。
 独政府は難民対応の厳格化を求める保守派の要求にあらがってきたが、10月の重要な州議選で与党が惨敗。これと並行する形でポーランドやチェコなどとの国境警備を強化し、同25日には不法移民の強制送還を容易にする法案を閣議決定した。フェーザー内相は、違法なケースが対象であり、「戦争やテロから守られるべき人々に対する人道的な責任を果たすために必要な措置だ」と釈明した。
 政党支持率では、とりわけ難民や移民の人権擁護を掲げる「緑の党」や「左派党」といった左派勢力が低迷。受け入れを拒む極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」は好調を維持し、右傾化が鮮明になっている。 
〔写真説明〕ドイツ東部の対ポーランド国境で、移民の流入ルートとされる地点を警戒する警官=10月11日(AFP時事)

(ニュース提供元:時事通信社)