【北京時事】東京電力福島第1原発の処理水が海洋放出されてから24日で3カ月。中国政府は「核汚染水」との呼び方を変えず、日本産水産物の禁輸が解除される見通しは立っていない。こうした中、中国では仕入れ先を日本以外に切り替える「日本離れ」の動きが進んでいる。
 「今夏以降、マグロの仕入れ先を地中海産に変更した」。中国の水産物輸入業者はこう打ち明けた。禁輸前は日本産に頼っていたが、新たな取引先の開拓を迫られた。
 11月中旬に米国で行われた日中首脳会談で、習近平国家主席は岸田文雄首相に処理水放出を巡る批判を展開。一連の風評被害で水産物の需要が落ち込んだ。国内で処理水放出に関する批判的な報道は減ったものの、「従来の主張との整合性もあり、貿易の正常化は当面難しい」(業界関係者)との見方が大勢だ。
 中国貿易統計によると、日本産魚介類の輸入は9月以降、淡水観賞魚を除きゼロとなっている。一方、韓国や香港からの輸入額は前年に比べ急増。11月上旬に上海市で開かれた国際輸入博覧会ではオーストラリアやロシアが自国産魚介類の売り込みに力を入れ、日本産からシェアを奪う構えだ。
 日系食品メーカー幹部は「日本産の禁輸は数年続くのではないか」と肩を落とす。ただ、日本企業も中国市場に頼らないようにシフトしていくと指摘。中国にある魚介類の加工工場を東南アジアに移転させることを視野に入れているといい、「禁輸が続くほど『中国離れ』が進む」と話した。 
〔写真説明〕宮城県塩釜市の魚市場に水揚げされたメバチマグロ=9月

(ニュース提供元:時事通信社)