【シドニー時事】オーストラリア産ワインが供給過剰となり、ボトル換算で28億本分が余っている。中国が高関税を課して輸入制限を続けており、この2年間で対外輸出全体が約3割減ったためだ。豪州の生産者は早期の制限解除を望んでいるが、見通しは不透明だ。
 中国は2020年にモリソン前豪政権が新型コロナウイルスの起源調査を求めたことへの事実上の報復として、大麦やワインなど複数の豪州産品の輸入を制限。ワインに対しては21年3月から最高218%の反ダンピング(不当廉売)関税を課している。
 豪州産ワインの対中輸出額は20年時点で約9億豪ドル(約840億円)だったが、高関税の適用後に100分の1以下に激減。農業系金融機関ラボバンクによると、余剰ワインは200万キロリットル超に上る。これはオリンピック用のプール約860個分を満たす量だ。生産者はタイ、ベトナムなどに新たな販路を開拓したが、中国と比べ市場規模が小さく、さばききれないのが実情だ。
 中国は今年5月に木材、8月に大麦と、豪州産品に対する輸入制限を解除したが、アルバニージー豪政権はワインについても速やかな解除を促している。ただ、中国がすぐに応じるかどうかは不明な上、中国内のワイン需要も景気減速に伴い落ち込んでいる。
 また、中国は環太平洋連携協定(TPP)への加入で協力を迫っており、ワインの問題と絡めてくれば、協議が難航する可能性もある。 
〔写真説明〕酒販店に並ぶ豪州産ワイン=19日、シドニー郊外

(ニュース提供元:時事通信社)