太陽光発電の普及で増えている昼間の「余剰電力」を有効活用する動きが加速している。夜間操業の工場を日中に稼働させる企業や、お得な料金プランも登場。電気は需給バランスが崩れると大規模停電につながる恐れがある。天候に左右されやすい再生可能エネルギーの拡大に向け、供給状況に応じて需要のピークをずらす「デマンドレスポンス」への関心が高まっている。
 鉄くずなどのスクラップを原料にして鉄鋼を製造する東京製鉄は2018年から、九州工場(北九州市)で夜間に稼働させている電気炉を日中も動かす取り組みを始めた。「余剰電力の受け皿となり、鉄鋼も増産する」(広報担当者)のが狙いで、栃木、愛知、岡山各県の工場でも30年までに実施する方針だ。
 東京電力グループのアジャイルエナジーX(東京)は、余剰電力の活用先として暗号資産(仮想通貨)の「マイニング(採掘)」と呼ばれる作業に着目。取引に不正がないかチェック、承認する作業で、膨大な計算処理を必要とする一方、仮想通貨で報酬も得られる。同社は一挙両得を狙い、実証実験を行っている。
 日照条件の良さから太陽光発電の普及が進む九州電力管内では、電力の供給量が需要を上回り、発電出力を抑える「出力制御」の発動が常態化。このため同社は今年4~6月、洗濯や料理などで日中の需要を増やした顧客に、買い物などに使えるポイントを付与する新メニューを提供した。
 中国電力も10月から、昼間の電気料金の割引セールを実施する。
 出光興産は、電力卸売市場での価格変動などを反映した電気自動車(EV)の充電サービスを試行。再エネによる電力供給が増える日中に取引価格が下がる傾向を踏まえ、指定の時間に充電するとポイントが得られる仕組みだ。自然エネルギー財団の斉藤哲夫上級研究員は「時間帯別料金メニューが増えれば電力の昼利用への切り替えが促され、再エネ投資も加速する」と期待している。 
〔写真説明〕東京製鉄九州工場で、余剰電力を使い稼働する電気炉(同社提供)
〔写真説明〕余剰電力の活用策を探る実証実験で、仮想通貨のマイニングを行う1300台のコンピューター(アジャイルエナジーX提供)

(ニュース提供元:時事通信社)