【ニューヨーク時事】気候変動の影響で水害や山火事のリスクが高まり、世界の住宅向け損害保険料に上昇圧力がかかっている。米国ではこの2年で平均3割超上がり、地球温暖化が進めば一層値上がりする可能性が高い。相次ぐ自然災害で採算が取れなくなり、撤退する保険会社も出ている。
 米保険代理店の調査では、2021年5月~23年5月に米国で更新された約2万7000件の住宅向け損害保険料は、平均で35%上昇。州別の上昇率は、ハリケーン被害が多いフロリダ州が68%、22年に大規模な山火事が発生したニューメキシコ州は47%に達した。調査担当者は「気候変動の脅威を踏まえれば驚きではない」と語る。
 カリフォルニア州は2割程度だが、近年の豪雨や山火事の多発を受け、業界最大手のステート・ファームは5月、同州で新規加入の受け付けを停止。米メディアによると、競合オールステートも昨年に同様の措置を取った。フロリダ州でも損保の撤退や破綻が相次ぐ。
 2年前に大規模洪水が発生したドイツの保険協会幹部は6月、国内の住宅保険料が「気候変動の影響だけで今後10年以内に2倍になる可能性がある」と述べた。さらに、「場所によっては保険料が非常に高くなり、顧客が加入できなくなるかもしれない」と警鐘を鳴らした。
 日本でも気候変動で増大する水害リスクに応じ、火災保険に付帯できる水災補償の保険料が一部地域で大幅に高くなる見通しだ。損保各社が加盟する損害保険料率算出機構は、温暖化が進めば「豪雨や台風による損害の増加が見込まれる」と指摘している。 
〔写真説明〕大型ハリケーン「イアン」の被害を受けた道路=2022年9月、米フロリダ州フォートマイヤーズ(AFP時事)

(ニュース提供元:時事通信社)