【エルサレム時事】イスラエルのネタニヤフ首相がイスラム組織ハマスとの衝突で「戦争の第2段階」を宣言し、地上戦が本格化して28日で1カ月。双方による4日間の戦闘休止合意が24日に発効し、ハマスは人質の、イスラエルはパレスチナ囚人の解放を進めている。合意期限が迫る中、双方は延長に前向きな姿勢を示しており、仲介に当たるカタール政府は27日、戦闘休止を2日間延長することで合意したと発表した。
 ネタニヤフ氏は26日、合意にはハマスが追加で人質を解放する枠組みがあり「(実現すれば)歓迎する」と述べた。イスラエル政府は、追加で10人が解放されれば休止を1日延長するとしており、人質解放を条件に延長を受け入れる考えを示した形だ。
 ハマスも26日、イスラエルとの合意期間を「延長しようと努めている」とする声明を発表した。バイデン米大統領も延長を支持。合意延長という方向性は定まったようにも見える。
 ただ、カタールのムハンマド首相兼外相は英紙フィナンシャル・タイムズに、解放で合意された人質50人はハマスが拘束している女性や未成年者らで、イスラエルはそれに加えてハマス以外の武装組織などが拘束しているとみられる40人以上の解放も求めていると指摘。そうした人質の居場所をハマスが特定できれば休止延長もあり得るが、「彼ら(ハマス)が何人を見つけられるか、明確な情報はない」と語った。
 一方、イスラエルが延長を求める背景には、人質の解放継続がある。ハマスは26日までにイスラエル人の女性と未成年者ら、タイ人など外国人の計58人を引き渡したが、拘束されていた約240人の一部にとどまる。ネタニヤフ政権は「ハマス壊滅」を掲げているとはいえ、帰還を求める国内世論を無視できない。
 イスラエル側はこれまでに、女性と未成年者のパレスチナ囚人117人を釈放した。その多くはヨルダン川西岸や東エルサレム出身で、イスラエルは釈放を手柄にして、ハマスが実効支配してきたガザ以外で支持を広げることを懸念。また、ハマスが戦闘休止中に態勢を立て直すことも阻止したい考えだ。
 軍事作戦の「第2段階」で、イスラエル軍はガザを南北に分断。地上と空からの攻撃を組み合わせて、北部にある最大都市ガザ市を包囲するように侵攻してきた。地下にハマスの重要拠点があると主張する病院に突入したほか、多数の避難民が身を寄せる学校への攻撃も伝えられた。
 犠牲者が増える中、イスラエルの「戦争犯罪」を指摘する声も強まっているが、ネタニヤフ政権はハマスが民間人を「人間の盾」にしていると反論。病院地下で発見したトンネルなどの映像を公開し、正当性を主張している。さらに、合意終了後の戦闘再開を表明し、ガザ南部にも作戦を拡大する方針だ。 
〔写真説明〕26日、ヨルダン川西岸ラマラで、釈放されたパレスチナ人を運ぶバスを取り囲み歓迎する人々(AFP時事)
〔写真説明〕26日、イスラエルの商都テルアビブで、解放された人質の到着を待つ人々(EPA時事)

(ニュース提供元:時事通信社)