【カイロ時事】イスラエルとパレスチナのイスラム組織ハマスの衝突は、ウクライナ情勢に向かっていた国際社会の関心を中東に集めた。2023年は対立していた国々がサウジアラビアを軸に関係改善を図る「地殻変動」によって地域の安定化の兆しが見えた一方で、スーダンは内戦状態に陥り、シリア内戦は今も続いている。24年も中東の紛争が終息する気配はないのが実情だ。
 ◇軸はサウジ
 イスラム教スンニ派の盟主を自任するサウジとイスラム教シーア派の大国イランが3月、外交関係の修復で合意した。シリアやイエメンの内戦などで対立を深めていた両国の仲介役を最終的に中国が務め、歴史的転換点と目された。
 サウジは、イランが後ろ盾を担うシリアのアサド政権との関係改善を進め、11年の内戦を機に参加資格を失ったシリアのアラブ連盟(21カ国・1機構)復帰を主導。アサド大統領は5月のアラブ連盟首脳会議で、「平和に向けた新たな段階の始点となることを期待する」と述べ、中東の外交舞台への復帰を印象付けた。
 米国の仲介でサウジとイスラエルの正常化交渉も進んだ。イスラエルのネタニヤフ首相は9月の国連総会でサウジとの和平が「突破口の入り口」にあると演説し、サウジの事実上の最高権力者ムハンマド皇太子は米メディアに「(正常化に)近づいている」と前向きに語った。しかし、正常化交渉はイスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザ攻撃にサウジが反発し、中断した。
 ◇泥沼化
 サウジなどは、イエメンの親イラン武装組織フーシ派と暫定政権との停戦に向けた協議を仲介。イエメンの紛争当事者は23日、停戦に向けたロードマップ(行程表)作成で合意したと発表したが、内戦終結へ具体的な動きは見えていない。
 スーダンでは4月に始まった正規軍と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」の衝突は、米国やサウジなどが調停に動いたが、首都ハルツームから西部ダルフール地方などに拡大し泥沼化。各地で略奪を行っているとされるRSFは、拠点のダルフールから支配地域を広げようとしている。
 双方の衝突で1万2000人以上が死亡し、約700万人が国内外で避難民となった。停戦に向けた軍とRSFの会談の可能性は最近も浮上し、地元メディアは実現すれば「転換点になる」と伝えたが、戦闘は依然続いている。 
〔写真説明〕紛争の続くスーダンを逃れ、国連に保護を求める人々=18日、南スーダン北部レンク(AFP時事)
〔写真説明〕シリアのアサド大統領=5月18日、サウジアラビア西部ジッダ(国営シリア・アラブ通信提供)(AFP時事)

(ニュース提供元:時事通信社)