ロシアのウクライナ侵攻開始後の2年間で、エネルギー資源を輸入に頼る日本の弱点が浮き彫りになった。政府は、供給途絶リスクが浮上した液化天然ガス(LNG)の安定確保を進めるが、米英の経済制裁でロシア産の調達を増やす道は狭まる。エネルギー安全保障の強化は引き続き課題だ。
 経済産業省によると、日本は国民生活と企業活動に必要なエネルギー源の38.4%(2020年、以下同)を石油、26.5%を石炭、24.0%を天然ガスに依存する。化石燃料は輸入頼みだ。天然ガスのほとんどはLNGの形で輸入しており、輸入量の1割弱は日本の権益維持が一時危ぶまれたロシア極東「サハリン2」事業からが占める。
 LNGは主に火力発電燃料、都市ガスとして利用される。侵攻開始前からガス田開発投資が減っていた影響で、世界のLNG供給は24~26年に不足する可能性がある。価格が高騰すれば、電気・都市ガス代が再び上がりかねない。
 このため政府は「戦略的余剰LNG(SBL)」と呼ぶ備蓄制度の導入を決め、23年12月に運用を始めた。民間企業にLNGを余分に調達させ、供給途絶時に経産省が指定する事業者に転売させる。
 これに先立ち、米国は23年11月、エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)と三井物産が参画する北極圏の開発事業「アークティックLNG2」を運営するロシア企業を経済制裁対象に追加した。英国も今月22日に制裁対象に追加しており、操業開始は見通せなくなった。
 28年にかけては、日本の電力・ガス会社がサハリン2からLNGを購入する長期契約が更改時期を迎える。JOGMECの原田大輔調査課長は「ロシア産は近くから安く手に入るので政策的には維持すべきだが、民間企業としてはリスクやコンプライアンスの問題がある」と指摘する。
 日本が再生可能エネルギーの利用を拡大する上で、天候に左右される発電量を補完するLNG火力発電の出番は続く。脱炭素化とエネルギー安保の両立へ「エネルギーのベストミックス(最適な組み合わせ)を見つけていかなければいけない」と日本エネルギー経済研究所の小山堅首席研究員は話す。年内に始まるエネルギー基本計画の改定に向けた議論では、燃料調達先の多角化と原発の位置付けが焦点となる。 

(ニュース提供元:時事通信社)