新型コロナウイルス対策のためのマスク着用が個人の判断に委ねられるようになってから、13日で1年となる。マスクを外す人は当初ほとんどいなかったが、昨年5月に感染症法上の位置付けが5類に移行した後は徐々に増加。マスクを着ける人と着けない人の共存がほぼ定着した。
 大手スポーツジム「ティップネス」王子店(東京都北区)によると、マスクは1年前から個人の判断に委ね、現在着用している人は1割ほど。5類移行後は人数制限も撤廃し、手指消毒液やパーティションだけ数を減らして置いている。
 トレーニングに訪れた沢田英宏さん(64)は「マスクは苦しいし、倍くらい負荷が掛かっていた」と振り返る。今は他の利用者と話す機会もでき、「一人で黙々とやっていたときより楽しくなった」と笑顔を見せる。一方、毎日来るという女性(80)は「いろんな人が来るので感染が怖い」と運動中もマスクは着けたまま。手指の消毒も欠かさないが、「それぞれで対策をしたらいいと思う」と冷静に話した。柳屋考司支配人によると、コロナ禍当初より利用者数は1.5倍以上に増えたといい、「従業員も表情が見えるようになり、接しやすくなった」と今の状況を歓迎した。
 タクシー業界では対応が分かれている。JR新橋駅前で客待ちをしていた70代の男性運転手は「外させてほしいが、会社が方針を変えてくれない」とうんざりした表情。緩和後はずっと外しているという個人タクシーの男性運転手(80)は「マスクをしていたら表情が見えなくて嫌な雰囲気になる」と理由を説明した。
 高齢者が多くいる介護老人保健施設「さくらがわ」(大阪市浪速区)は重症化リスクを考慮し、職員には全員マスク着用を義務付けている。利用者も施設内では外しているが、外泊から帰った際や面会時などは着用を求められる。利用者の70代女性はマスクにはもう慣れたといい、「仕方がない」と話していた。 
〔写真説明〕マスク着用が個人の判断に委ねられたスポーツジムでトレーニングする人々=11日、東京都北区
〔写真説明〕マスクを着けて談笑する介護老人保健施設「さくらがわ」の職員と利用者(中央)=11日、大阪市浪速区

(ニュース提供元:時事通信社)