日本政府は国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への資金拠出を再開する方向で検討に入った。同機関職員がイスラム組織ハマスによるイスラエル奇襲に関与した疑惑を受け、欧米諸国と歩調を合わせる形で拠出を一時停止していた。月内に来日する同機関のラザリニ事務局長から再発防止策を聴取し、最終判断したい考えだ。
 上川陽子外相は22日の参院外交防衛委員会で、ラザリニ氏からガバナンス強化について報告を受けたいと説明。「拠出再開に向けて総力を挙げて対応したい」と表明した。記者会見では「スピード感を持って検討を進めたい」と語った。
 政府は1月の疑惑浮上を受け、2023年度補正予算に計上したUNRWA向けの約3500万ドル(約52億円)の拠出を停止し、ガバナンス強化などの取り組みを求めてきた。「国民の税金がテロに使われるようなことは間違ってもあってはならない」(外務省関係者)との判断からだ。
 同盟国で、UNRWAの最大資金提供国でもある米国が拠出停止に踏み切ったことも考慮したとみられる。
 ただ、10カ国以上による資金拠出停止もあり、イスラエルの攻撃が続くパレスチナ自治区ガザでは食糧不足が深刻化。飢饉(ききん)が差し迫っているとも指摘される。こうした情勢を踏まえ、今月に入りカナダやスウェーデン、オーストラリア、フィンランドなどが拠出再開を発表した。
 日本政府は2月下旬、UNRWA以外の国際機関を通じてガザに3200万ドル(約48億円)の緊急無償資金協力を行うことを決めたが、人道状況の悪化を受けて与党の公明党も拠出再開を求めている。首相周辺は「ガバナンスの強化が確認できればすぐにでも再開したい」と語った。 
〔写真説明〕記者会見する上川陽子外相=22日、外務省

(ニュース提供元:時事通信社)