【ワシントン時事】10日の日米首脳会談では、同盟強化に向けた自衛隊と米軍の司令部機能の再構築が、主な議題の一つとなる見通しだ。日米の指揮系統見直しを研究する米国笹川平和財団シニアディレクターのジェームズ・ショフ氏に、焦点を聞いた。
 ―現在の日米の指揮系統の課題は。
 日米共同作戦で最も重要な事例は、2011年の東日本大震災で自衛隊と米軍が被災地支援に当たった「トモダチ作戦」だ。作戦は成功したが、意思決定や情報共有に課題もあった。その後、日米はより緊密に演習を実施するなど末端(部隊間)の連携は進んだ。
 だが、米側の指揮統制は、今もハワイに司令部を置くインド太平洋軍の下、各軍が別々に行っている。日本は陸海空の自衛隊を一元指揮する「統合作戦司令部」の創設を準備しているが、横田基地(東京都)にある在日米軍司令部には作戦の計画・指揮権限がない。より多くの権限を与えるべきだ。2国間の調整事務所の設置も必要だろう。
 ―指揮統制の再構築によって、有事に自衛隊が米軍の指揮下に入るのではと不安視する声もある。
 法的にも政治的にも、それはあり得ない。日米では意思決定の手法が異なる。首脳会談で詳細に触れなくても、間を置かず米政府側から検討状況の説明があるのではないか。米国が組織改編の方針を決める必要があるが、インド太平洋軍には、小さな在日米軍司令部が作戦指揮を担えるのかという懐疑論もある。
 ―自衛隊の統合作戦司令部と米側の新たなカウンターパートは、台湾有事なども協議するのか。
 そうなると思う。ただし、中国や台湾と特定せず、「南シナ海での軍事衝突」など一般的な事例を想定するだろう。
 ―トランプ前大統領が返り咲いた場合は。
 今年のうちに決めないと、ホワイトハウスの後ろ盾を失い、再構築協議が滞る恐れはある。トランプ氏が再び大統領になれば、駐留経費を巡る交渉で在日米軍司令部の強化をてこにするかもしれない。 
〔写真説明〕取材に応じる米国笹川平和財団シニアディレクターのジェームズ・ショフ氏=2日、ワシントン

(ニュース提供元:時事通信社)