円安・ドル高が加速し、約34年ぶりの安値となる1ドル=153円台に突入した。米連邦準備制度理事会の利下げ開始が後ずれするとの見方が強まる一方、日銀は当面緩和的な金融環境が継続すると強調しており、拡大した日米金利差が縮まりそうにないためだ。市場が「防衛ライン」とにらんだ152円を下回る円安にも、政府・日銀の為替介入と見られる動きはなかった。このため、円安が一段と進むとの見方も出ている。
 折しも岸田文雄首相が首脳会談のため訪米中で、市場では「為替操作国と受け止められる介入は実施しづらい」(外為ブローカー)との見方が出ていた。「介入は首相の帰国後。介入がなければ、円は160円まで売られる」(FX会社)との見立てもあった。
 152円が防衛ラインとして取り沙汰されてきたのは、2022年10月に円安が151円94銭まで進行した局面で政府・日銀が円買い介入を実施したためだ。円安が151円97銭まで進んだ今年3月27日には財務省と金融庁、日銀が情報交換会合(3者会合)を緊急に開き、急激な円安の進行をけん制していた。
 円相場は3者会合の後、介入警戒感から151円台でこう着感が強まっていた。しかし、今月10日夜公表の米物価指標が高い伸びを示すと「防衛ライン」は破られ、153円台前半まで急落した。
 鈴木俊一財務相は11日午前、為替介入の実務を指揮する神田真人財務官と「頻繁に連絡を取り合っている」と記者団に強調したが、円売りけん制効果は長続きしなかった。円安に歯止めがかからなければ、「日銀に早期の追加利上げを催促する相場になる」(国内証券)との指摘も出ている。 

(ニュース提供元:時事通信社)