2024/05/27
防災・危機管理ニュース
急性咽頭炎などを起こす溶連菌が重症化した「劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)」の患者数が、過去最多ペースで増加している。多臓器不全や手足の壊死(えし)などを引き起こし、致死率は約30%。感染力が強いとされる株の検出数も増えており、識者は患者の目立つ高齢者を中心に警戒を呼び掛けている。
溶連菌は、主に人との接触や飛沫(ひまつ)で感染する。症状が出ないことも多いが、血液や筋肉などの組織に侵入して、まれにSTSSを発症。発熱や悪寒といった初期症状から急速に進行し、血圧低下や多臓器不全でショック状態に陥る。
国立感染症研究所によると、昨年のSTSS患者数は941人(速報値)で、現在の統計を取り始めた1999年以降で最多だった。今年は5月12日までに851人が確認され、昨年同期の約2.8倍に上る。
劇症型の原因となる溶連菌はA群やB群、G群などに分類。2010年代に英国で流行した「M1UK」株はA群の一種で毒素が強く、昨年後半からは関東地方などでも検出数が増えている。厚生労働省は監視を強めているが、STSS増加との関連は分かっていない。
感染症に詳しい東京女子医科大病院の菊池賢教授は「STSS患者は65歳以上の高齢者が大半。靴擦れなど足の小さな傷や、水虫のただれから菌が入ることが多い」と指摘。高齢者介護に携わる人は、足が清潔に保たれているか毎日観察してほしいと呼び掛ける。
医療機関を受診しても早期の診断は困難で、症状の経過で判断するしかないという。足が腫れて急速に拡大し、39度以上の高熱などが出た場合は早急に対応が必要で、菊池教授は「早い段階で抗生物質を投与すれば治療できるが、進行すると感染部位の切断が必要になる。強い症状があれば、入院設備のある病院を受診してほしい」と話す。
〔写真説明〕劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)の原因となるA群溶連菌(国立感染症研究所提供)
(ニュース提供元:時事通信社)
![](/mwimgs/0/1/-/img_0170d9d616d6af8712fb4284869c60dc14954.jpg)
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
-
-
3線モデルで浸透するリスクマネジメントコンプライアンス・ハンドブックで従業員意識も高まる【徹底解説】パーソルグループのERM
「はたらいて、笑おう。」をグループビジョンとして掲げ、総合人材サービス事業を展開するパーソルグループでは、2020年のグループ経営体制の刷新を契機にリスクマネジメント活動を強化している。ISO31000やCOSO-ERMを参考にしながら、独自にリスクマネジメントの体制を整備。現場の業務執行部門(第1線)、ITや人事など管理部門(第2線)、内部監査部門(第3線)でリスクマネジメントを推進する3線モデルを確立した。実際にリスクマネジメント活動で使っているテンプレートとともに、同社の活動を紹介する。
2024/07/23
-
インシデントの第一報を迅速共有システム化で迷い払拭
変圧器やリアクタなどの電子部品や電子化学材料を製造・販売するタムラ製作所は、インシデントの報告システム「アラームエスカレーション」を整備し、素早い情報の伝達、収集、共有に努めている。2006年、当時社長だった田村直樹氏がリードして動き出した取り組み。CSRの一環でスタートした。
2024/07/23
-
「お困りごと」の傾聴からはじまるサプライヤーBCM支援
ブレーキシステムの開発、製造を手掛けるアドヴィックスは、サプライヤーを訪ね、丁寧に話しを聞くことからはじまる「BCM寄り添い活動」を2022年度から展開している。支援するのは小規模で経営体力が限られるサプライヤー。「本当に意味のある取り組みは何か」を考えながら進めている。
2024/07/22
-
-
危機管理担当者が知っておくべきハラスメントの動向業務上の指導とパワハラの違いを知る
5月17日に厚生労働省から発表された「職場のハラスメントに関する実態調査報告書」によると、従業員がパワハラやセクハラを受けていると認識した後の勤務先の対応として、パワハラでは約53%、セクハラでは約43%が「特に何もしなかった」と回答。相談された企業の対応に疑問を投げかける結果となった。企業の危機管理担当者も知っておくべきハラスメントのポイントについて、旬報法律事務所の新村響子弁護士に聞いた。
2024/07/18
-
基本解説 Q&A 線状降水帯とは何か?集中豪雨の3分の2を占める日本特有の現象
6月21日、気象庁が今年初の線状降水帯の発生を発表した。短時間で大量の激しい雨を降らせる線状降水帯は、土砂災害発生を経て、被害を甚大化させる。気象庁では今シーズンから、半日前の発生予測のエリアを細分化し、対応を促す。線状降水帯研究の第一人者である気象庁気象研究所の加藤輝之氏に、研究の最前線を聞いた。
2024/07/17
-
-
災害リスクへの対策が後回しになっている円滑なコミュニケーション対策を
目を向けるべきOTリスクは情報セキュリティーのほかにもさまざま。故障や不具合といった往年のリスクへの対策も万全ではない。特に、災害時の素早い復旧に向けた備えなどは後回しになっているという。ガートナージャパン・リサーチ&アドバイザリ部門の山本琢磨氏に、OTの課題を聞いた。
2024/07/16
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方