2025/04/27
社会と向き合う企業防災・BCP
キートレンド(3) 非常用電源・燃料を企業間で共有

飲料水や食料は比較的備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになってきた。だが、電気の備えはいまだ不十分だ。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄確保が難しい。防災・BCPトータル支援のスタートアップ企業レジリエンスラボ(神奈川県横浜市、沖山雅彦社長)は2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービス「BCPチャージ」を本格化する。
レジリエンスラボ
神奈川県横浜市
防災・BCPのトータル支援サービスを提供するスタートアップ企業のレジリエンスラボは2025年度、大規模災害時に必要となる非常用電源の燃料を会員同士で補い合う備蓄シェアリングサービス「BCP チャージ」を本格化する。
企業がエネルギー事業者と取り交わす災害時の燃料配送契約を、同社が間に入って取りまとめる。複数の企業が集まって発電用燃料を一定量確保し、保管・管理コストをシェアすることで費用負担を抑える仕組み。燃料事業者と個別の契約が難しい中堅・中小企業でも、いざというときに備えられる。
●「BCPチャージ」の概念図とメリット

同社は実際に燃料を配送する際のシミュレーションを行うなど、仕組みのブラッシュアップを行ってきたが、2月17日に神奈川・横浜市のみなとみらい地区でサービス提供の手順やオペレーションの課題を検証する実証実験を実施。結果をふまえて事業化を加速する考えで、今年度、一部地域から会員の募集を開始する。
みなとみらい地区で燃料シェアの実証実験
実証実験は一昨年11月に静岡・三島市で行って以降2回目。燃料配送協力会社の三和エナジーが横浜市港北区の拠点から約6キロ離れたみなとみらい地区に中型タンクローリーで重油を運搬、神奈川大学みなとみらいキャンパス、横浜コネクトスクエア、クイーンズスクエア横浜、神奈川県警友会けいゆう病院の4施設に模擬給油を行い、結果を検証した。
●「BCP チャージ」実証実験の概要
•実施場所: 神奈川県横浜市みなとみらい21地区(神奈川大学みなとみらいキャンパス、横浜コネクトスクエア、クイーンズスクエア横浜、一般財団法人神奈川県警友会けいゆう病院)
みなとみらい地区はウォーターフロントの再開発エリアで、計画的に整備されたオフィスビルや商業施設が立ち並び、近代的都市機能が集積する。「企業のバリエーションが豊富で、災害時の重要事業や優先順位がそれぞれ違う。電源確保という共通項を通じ、各社が抱える課題を見ることができた」と社長の沖山雅彦氏は話す。
発災直後、病院や学校、商業施設で優先的に守るべきリソースや継続すべき事業は違えども、電気が使えるか・使えないかが状況を大きく左右するのは共通だ。沖山氏によると、計画都市のみなとみらい地区では大型の非常用発電機と3日分の燃料を備蓄している企業が多いという。
ただ、災害を経験したことがないゆえに、訓練を含め一度も発電機を動かしたことがないところも複数。「そうした施設は重油か軽油かといった基本から確認しないといけない。災害が起きてからのやり取りでは間に合わず、その実情がわかっただけでも収穫。逆に今回の実証実験に協力してくれた施設の方々からも『課題に気づけた』と喜ばれた」


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