高年齢者雇用安定法で求められる定年に関する措置
高年齢者雇用確保措置と高年齢者就業確保措置

山村 弘一
弁護士・公認不正検査士/東京弘和法律事務所。2006年慶應義塾大学文学部人文社会学科人間関係学系社会学専攻卒業、09年同大学大学院法務研究科法学未修者コース修了、10年弁護士登録、21年公認不正検査士(CFE)認定。一般企業法務、債権回収、労働法務、スポーツ法務等を取り扱っている。また、内部公益通報の外部窓口も担っている。
2025/04/25
弁護士による法制度解説
山村 弘一
弁護士・公認不正検査士/東京弘和法律事務所。2006年慶應義塾大学文学部人文社会学科人間関係学系社会学専攻卒業、09年同大学大学院法務研究科法学未修者コース修了、10年弁護士登録、21年公認不正検査士(CFE)認定。一般企業法務、債権回収、労働法務、スポーツ法務等を取り扱っている。また、内部公益通報の外部窓口も担っている。
我が国においては、人口における高齢者の割合の増加と総人口の減少が進んでいます。総務省統計局によれば、2022年9月15日現在の推計で、65歳以上の人口が総人口に占める割合が29.1%となり、また、総人口は前年に比して82万人の減少となっています。このような人口動態もあって、近時、労働力不足が叫ばれているところです。そして、日本社会を維持するためには、高齢者の方々にも労働力として活躍してもらうことが重要とされています。
これにつき、高齢者の雇用に関する法律として、高年齢者雇用安定法(正式名称:高年齢者等の雇用の安定等に関する法律。以下「高年法」)があります。
高年法は「定年の引上げ、継続雇用制度の導入等による高年齢者の安定した雇用の確保の促進、高年齢者等の再就職の促進、定年退職者その他の高年齢退職者に対する就業の機会の確保等の措置を総合的に講じ、もつて高年齢者等の職業の安定その他福祉の増進を図るとともに、経済及び社会の発展に寄与することを目的」としています(1条)。
そして、高年法は、定年制に関して、事業主に義務・努力義務を課しています。その主な2つが、高年齢者雇用確保措置(9条)と高年齢者就業確保措置(10条の2)です。今回は、これら2つの措置を取り上げてご説明したいと思います。
なお、「高年齢者」という文言について、高年法2条1項で「厚生労働省令で定める年齢以上の者」とされ、当該年齢は55歳とされています(厚生労働省令1条)。55歳以上が「高年齢者」というのは、現代の感覚からすると違和感を覚える方もいらっしゃるかと思いますが、人口統計等における「高齢者」とは異なるものですので、ご留意ください。
高年齢者雇用確保措置は、65歳未満の定年を定めている事業主に対する義務となっています(9条1項柱書)。
該当の事業主は、次の3つのいずれかの措置をとることが義務づけられています(9条1項)。
①定年の引上げ
②継続雇用制度の導入
③定年の定めの廃止
上記のうち、実際に最も多く採用されているのは②の継続雇用制度であり、これは「現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度」(9条1項2号括弧)とされています。
この継続雇用制度を採用した場合、事業主は、原則として、継続雇用を希望する全員を継続雇用する義務(希望者全員を雇用継続制度の対象とする必要)があります。
しかしながら、高年法9条3項に基づき定められている指針(平成24年11月9日・厚生労働省告示第560号)では、次のように例外が示されています(第2、2)。
ただし、継続雇用しない場合においては「客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であることが求められると考えられることに留意する」ものとされていますので(上記指針第2、2)、事業主においては、いわゆる解雇権濫用法理が適用される場合と同様に、慎重な検討が求められるといえます。
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