【バンコク時事】クーデターで実権を握ったミャンマー国軍が2月に徴兵制の実施を発表してから1カ月が経過した。若者らの間に動揺が広がり、国外などに逃れる動きが進む。国内で迫害されるイスラム系少数民族ロヒンギャが国軍に強制連行された疑いもあり、国連は懸念を表明した。
 国軍は2月10日、18歳以上で一定年齢までの男女を対象とした徴兵制の実施を突如発表。その後、4月から年6万人規模で招集を始め、当面は女性を除外することを明らかにした。
 背景には昨年10月以降に激化した少数民族武装勢力との衝突で国軍が劣勢となり、多数の兵士が死傷したり投降したりしたことがある。シンクタンク「米平和研究所」のイェミョーヘイン客員研究員は「徴兵制の開始は、国軍の兵員不足の深刻化を浮き彫りにした」と指摘した。
 徴兵から逃れるため、出国を目指す若者も増えている。最大都市ヤンゴンにある労働関係の政府機関を訪れていた大学生の男性(21)は取材に対し、「クーデターに抗議して学校には通っていない。兵役に就きたくないのでマレーシアに行く」と明かした。女性(24)は「国軍は女性を当面徴兵しないと言っているが信用できない。シンガポールで介護の仕事に就きたい」と話した。
 一部の若者は少数民族が支配する地域に逃れたり、国軍との戦闘に参加したりしているもようだ。隣国タイへ不法に入国し、拘束される事例も相次いでいる。
 ミャンマーの独立系メディアは、少数民族勢力と国軍の戦闘が続く西部ラカイン州で2月、少なくとも計約500人のロヒンギャの男性が国軍によって強制的に連行されたと報じた。国軍は否定し、少数民族側による行為だと反論している。国連人道問題調整事務所(OCHA)は今月公表した報告書で、「弱い立場のロヒンギャは紛争の全当事者から徴兵される恐れがあり、主要な懸念事項だ」と訴えた。 
〔写真説明〕パレードするミャンマー国軍兵士=2月12日、ネピドー(AFP時事)

(ニュース提供元:時事通信社)