【ニューデリー時事】ロシア・モスクワ郊外で22日起きた銃乱射事件で、過激派組織「イスラム国」(IS)が犯行を主張した。専門家はロシアが近年、アフガニスタンを拠点とするIS支部「イスラム国ホラサン州」(IS―K)の優先的な標的となっていると指摘する。
 「ホラサン」とはアフガンやイランの一部地域などを指す歴史的な呼称。IS―Kは2015年1月に設立を宣言、アフガンのイスラム主義組織タリバンの元メンバーらがISに忠誠を誓い構成員となった。主に同国やパキスタンで活動する。
 タリバンと同じくイスラム教スンニ派だが、タリバンが20年に米国と和平合意を結んだことを批判。対立関係にある。
 今回の事件の実行犯はアフガンと接する旧ソ連構成国タジキスタン国籍と報じられている。IS―Kは近年、中央アジアを越えロシアにも勢力拡大を図っていたとされる。テロ専門家のハンス・ヤコブ・シンドラー氏はAFP通信に対し、「ウクライナ侵攻への注力に伴い、ロシアはより魅力的な標的となっている」と語り、国内の治安対策が手薄になった隙を突かれたことを示唆した。
 旧ソ連のアフガン侵攻や、ロシアによる2度のチェチェン紛争がロシア敵視の背景にあるとみる専門家もいる。ロシア南部チェチェン共和国はイスラム教徒が多数派を占めており、同じイスラム教徒がロシアの「弾圧」を受けたとの見方だ。シリアなどを勢力範囲としたISが、同国のアサド政権を支援するロシア軍の空爆を受けた経緯から、ロシアへの反感を強めていたとも伝えられている。 

(ニュース提供元:時事通信社)