米・大統領選挙を控え「もしトラ」の影響分析が始まっている(イメージ:写真AC)

本年は、いままで常識とされていたことが覆る、価値観の転換すら起きている状況を、ビジネス視点やリスク視点で語ろうとしていた。だが、周知のように正月早々2つの大きな事象が発生し、リスク管理の立場からまずはそちらを優先するべきと判断した。今回からは元に戻し、当初予定していた内容を現実のリスクを踏まえて語らせていただく。

「もしトラ」は他人事ではない

今年、世界の方向性をひっくり返す可能性があるイベントがある。米国大統領選挙である。一部で「もしトラ」と呼ばれる、もしも米国大統領選挙で共和党トランプ氏が大統領に返り咲けばどうなるか、どのような影響があるのかという分析がなされている。

この影響は日本にとって他人事ではなく、ビジネス面でもさまざまな影響を考慮する必要がある。そして前提として認識しておかねばならないのが、当たり前だが、我々は米国大統領選挙の選挙権を持たないことだ。つまり、大きな影響を受けるが、その決定には関与できない。したがって、市場の環境変化と同様、受け入れて柔軟に対応する必要があるのであり、変化を冷静に見極めることが重要になる。

「もしトラ」で影響があるとされる事象を順次考察していきたいが、まずは移民問題に関して考える。

トランプ1次政権時代に物議をかもした国境の壁(イメージ:写真AC)

トランプ1次政権時代に「国境の壁」が物議をかもした。その後、民主党バイデン大統領になって緩和され、結果、再び不法移民の流入が問題視されている。リベラル色が強く、当初は移民受け入れに前向きだったニューヨークも、それならば受け入れてみろと他州から丸投げされ、財政が危機状態でギブアップに近い状況だ。ヒューマニズム的な優等生では現実に立ち向かえないことが露呈している。

この問題は、人道的視点と国益視点との価値観の対立がある事象であり、賛否両論あるのは当然だ。が、どちらの価値観に寄り添うのかということではなく、現実として国際社会の動きを客観的に受け止め、事実は事実として目を逸らさない必要がある。

トランプ1次政権時に「国境の壁」が物議をかもしたということは、すでにその時点で相当大きな問題になっていたということだ。米国内の雇用が失われ、治安も悪化し、国益を毀損していた。そして、ヨーロッパ各国の現状の移民問題も同様の状況に陥っている。

このように考えると、国際社会としては、行き過ぎた人道主義に対する揺り戻し現象が起きていると考えるべきである。その一つの現れとして、政治的選択の方向性もバランスされて然るべきなのだ。