能登半島地震では来日中の外国人技能実習生も被災した。地震が心身に与えた影響は大きく、トラウマを抱えたまま帰国を決めた実習生もいる。石川県珠洲市の蛸島漁港では、不足する漁船乗組員を実習生に頼っているのが実情で、漁協関係者からは「仕事が成り立たなくなる」と不安の声が聞かれた。
 「トラウマが今もまだなくならない」。流ちょうな日本語を話すインドネシア人技能実習生のディアン・アンドリアンさん(29)は、元日に起きた地震に苦しめられている。2022年4月から漁船の乗組員を務めており、来日は2回目だ。
 仕事が休みで、他の実習生と5人で暮らすアパートで過ごしていた時、突然経験したことのない大きな揺れに襲われた。「日本語の放送はパニックになり何を言っているのか分からなかった」。はだしのまま部屋を飛び出し、地元住民らと近くの山に逃げ、たき火を囲んで一夜を明かした。
 母国の両親や妻からは「余震が危ないなら帰ってきて」と言われた。ディアンさんは「家族の力になりたくて日本に来た。もし私に何かあったら力になる人がいない」と語る。漁は1月下旬に再開したが、4月末に帰国することを決めた。
 県漁業協同組合すず支所によると、蛸島漁港ではインドネシア人技能実習生約20人を受け入れているが、ディアンさん以外にも帰国希望者がいるという。山崎幸治参事は「後継者がいない中、実習生がいないと漁業が成り立たない」と指摘。実習生の不安を少しでも解消しようと、防災訓練などを検討しているという。 
〔写真説明〕石川県珠洲市で震災後初となる定置網漁を再開し、ブリなどを水揚げする漁師ら=2024年1月、同市の蛸島漁港
〔写真説明〕能登半島地震の発生後、避難した山でたき火を囲む外国人技能実習生ら=石川県珠洲市(ディアン・アンドリアンさん提供)

(ニュース提供元:時事通信社)