イスラム組織ハマスによるイスラエル奇襲を機に勃発した双方の戦闘は7日で半年となる。激しい交戦の舞台となっているパレスチナ自治区ガザでの死者は約3万3000人に達した。悪化の一途をたどる人道状況は改善の可能性があるのか。ガザで拘束されたままの人質の解放や戦闘休止の道筋は。現状と今後の主な焦点をまとめた。
 ◇「飢餓寸前」の食料不足
 ガザではイスラエルによる人道支援物資の搬入制限で食料や水、医療品が極端に不足。特に、主要搬入ルートである南隣のエジプトから遠いガザ北部は深刻で、「ガザ人口の約4分の1が飢餓寸前」(国連)とされる。米国や国際社会は支援拡充を訴えるが、イスラエルは飢餓は起きていないと反論。4月に入り、国際NGOの車列がイスラエル軍に誤爆され外国人職員ら7人が死亡し、安全への懸念から他のNGOも支援活動を中断した。人道危機の解消は一段と困難な情勢だ。
 ◇休戦交渉
 イスラエルとハマスは仲介国カタールやエジプトを交え、間接交渉を断続的に実施。6週間の戦闘停止や、パレスチナ囚人と人質の交換などを軸に議論している。ただ、ハマスは恒久停戦とガザ避難民の帰還などを要求。ハマスの勢力立て直しを警戒するイスラエルは拒否しており、隔たりが埋まらない。
 ◇人質解放
 昨年11月に実現した7日間の戦闘休止では、人質100人超が解放された。イスラエル軍によると、ハマスや他の武装組織が今も130人超を拘束し、一部は死亡しているとみられる。イスラエルでは、拘束の長期化で人質解放を優先する世論が沸騰。連日デモや集会が開かれ、解放を達成できないネタニヤフ首相の辞任などを求めている。
 ◇ラファ侵攻
 イスラエルは、ガザで残されたハマス最後の主要拠点である最南部ラファへ地上侵攻を計画。ラファに残る住民らは推計約150万人。進軍すれば民間人の甚大な犠牲が懸念され、イスラエル最大の同盟国・米国なども強く反対している。
 米国は代替案として、規模を縮小してハマス重要幹部に標的を絞った作戦などを提案しているとみられるが、ネタニヤフ政権はあくまで地上作戦が不可欠と主張。米・イスラエルの亀裂はかつてなく広がっている。
 ◇対ヒズボラ・イラン
 イスラエル北部ではガザの戦闘と並行し、ハマスと連帯するレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの砲撃が続き、イスラエル側にも死者が出ている。イスラエルは、ハマスより強大なヒズボラとの軍事作戦の可能性も示唆。ヒズボラの後ろ盾となっているシーア派大国イランへの圧力も強め、隣国シリアなどでイランの大使館や軍事施設へ空爆を強行している。
 これに対抗するイランは、近隣国で活動する親イラン勢力を利用し、中東の米軍基地やイスラエルへの攻撃を後押ししているもようだ。緊張激化の火種は各地に波及し、中東全域が不安定化している。 
〔写真説明〕パレスチナ自治区ガザに設置された避難民向けテント=3月27日、南部ラファ(AFP時事)

(ニュース提供元:時事通信社)