【北京時事】中国で民主化運動が武力弾圧された1989年の天安門事件から、4日で34年を迎えた。習近平国家主席(共産党総書記)への権力集中で「一強体制」が確立する中、言論空間は狭まる一方だ。当局は追悼や抗議の動きを阻止しようと、神経をとがらせている。
 事件の舞台となった北京の天安門広場周辺は4日、多くの観光客でにぎわう一方、厳重な警備態勢が敷かれた。広場に通じる道では身分証の確認が行われ、「記者は特殊だから通せない」として通行が許可されなかった。多数が犠牲となった地下鉄・木※地(※木ヘンに犀)駅周辺でも3日夜、数メートル置きに制服・私服の警備要員が配置され、通行人に目を光らせていた。
 民主派らへの監視も強まっている。著名人権派元弁護士の余文生氏と妻の許艶氏は4月、北京の駐中国欧州連合(EU)代表部に向かう途中で拘束され、5月下旬に騒動挑発容疑で正式に逮捕された。5月末には、天安門事件を追悼するSNSの投稿削除を拒否した湖南省の活動家が拘束された。これ以外にも、民主派の市民らが「旅行」名目で強制的に当局に連れ出され、SNSによる発信を阻止されているもようだ。
 4日を前に、事件犠牲者遺族の会「天安門の母」は「真相究明、賠償、問責」を求める声明を発表。「政府はこの残酷な事件の記憶を消し去ろうとしている」と非難し、謝罪するよう訴えた。
 社会の統制が年々厳しくなる一方で、声を上げる人々もいる。3日には、北京市内で自由と民主を求めるビラをまいた女性が、当局に取り押さえられた。昨年11月には、過度な行動制限を伴う「ゼロコロナ」政策に反発する抗議デモが各地で発生。北京では若者らが言論統制を逆手に、白紙を掲げて抗議する「白紙運動」が起きた。
 習指導部は、こうしたデモ参加者の摘発やネットの監視を強化している。5月末には、習氏がトップを務め内外の治安強化を統括する「中央国家安全委員会」の会議を開き、「強風や荒波に備えなければならない」と強調。監視・警報システムの厳格化を確認した。 
〔写真説明〕4日、北京の天安門広場前を通る市民ら

(ニュース提供元:時事通信社)